草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

ケセランパサラン インタビューその1

ケセランパサラン(Keseran Pasaran.)は、山口愛さん(ボーカル/カズー)と片野浩道さん(ギター/コーラス)のふたりからなる音楽ユニットです。全国各地でライブをやっていますが、ふたりとも草加市出身で、草加市内のお店やイベントでも活発にライブを行っているので、草加の人たちにはおなじみです。

2018年11月27日にインタビューさせていただき、草加を再発見するフリーペーパー草生人2019年新春号に記事を掲載しました。

しかし、記事で載せきれなかった面白い話がたくさんあるので、こちらにインタビューのロングバージョンを掲載します。

たいへんに長くなったので、「その1」「その2」「その3」の3回に分けて掲載します。

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2018年11月27日、Cafe gallery CONVERSIONにて。
左が片野浩道さん、右が山口愛子さん。

お客さんが書いた言葉を無作為に選んで曲を作ったりしました

ビートルズがレノン・マッカートニー名義で曲を作っているように、作詞作曲がケセランパサランになっていますが、どうやって曲を作っているんですか?

浩道 曲の作り方はこれだっていうのはないんですよ。僕がある程度メロディーを作ったものに愛ちゃんが歌詞を作ったのもありますし、愛ちゃんが「ふふふーん」と歌ったものに僕がギターでコードを付けて、「もうちょっとCメロ足したら……」とか相談しながら作ることもあります。一番多いのが、いっせいので僕が適当にギター弾いて、愛ちゃんが歌う。

★即興ですね。

愛子 それが一番自然で。

浩道 愛ちゃんの歌いやすいメロディーで。

愛子 前はよくライブでそういうコーナーを設けたりしました。

浩道 夏だったら、ライブの最初に「あなたの夏の思い出は?」とかのお題でお客さんに言葉を書いてもらって、後半それを集めて、無作為に選んでそれで曲を作ったりしました。

愛子 楽しい! スリリングだけど。

浩道 「ひびけ」なんかはそれで。

★「ひびけ」は、あのメロディーにはあの歌詞しかつかない、と思わせるほどの決定的なマッチングじゃないですか。

愛子 あれはトンネルでやってたんですよ。ひろくんがギターをじゃかじゃか弾いて、「ひびけ、ひびけー」って。最速でできましたね。

★楽しそうですね。

YouTube「ひびけ/ケセランパサラン(Keseran Pasaran.)」

www.youtube.com

全部いいなって思って好きになったのがジャクソン5

★どんな音楽を聞いてきましたか。

浩道 僕は洋楽の人だったんですよ。中学のときから、深夜にやってる洋楽の名曲ばっかりやっているラジオを聴いて。ロック……、パンクとか好きでしたね。最初にはまったのがザ・フーです。

★古いですね。

浩道 クラッシュとか、もちろんビートルズも。高校生くらいになってのめり込んだのがレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。その間にもちょっとずつ、ジャズっぽいのとかラテンとかも気になって、いろいろちょいちょいと。

愛子 私は真逆で、古い邦楽や流行った曲とか、その時その時自分が聴きたい曲を聴いていました。初めて買ったCDが東京ディズニーランドエレクトリカルパレードのテーマだったりとか、もうめちゃくちゃ(笑)。それでテンションが上がる。で、二十歳くらいになって歌を真剣にやりだしたときに、大人たちに、歌やるならルーツである洋楽を聴けと。大人ってそう言うじゃないですか。

★音楽通のおじさんたち(笑)

愛子 じゃあ聴きます、ってフーとかも聞いて。でも歌詞がすぐにわからないじゃないじゃないですか。なので訳を読んだりして。で、全部いいなって思って好きになったのがジャクソン5だったんです。

マイケル・ジャクソンのかわいい声の時代ですね。

愛子 はい。あといっぱい聴いたのがセリーヌ・ディオンです。

ストロークするとき強弱をつけるために8の字を書くクセがあって

★浩道さんはいつからギターを?

浩道 家にクラシックギターがあったんです、母親がやっていて。中学生くらいのときから触りだして、楽譜は全然読めないんですけど、クラシックギターの、タブ譜じゃなくて普通の五線譜を、わからないながらも一音一音たどって、練習曲を何日もかけて一曲を覚える、とかやってましたね。高校から仲間たちとバンドをやり出しました。

★フォークギターも指で弾いてますね。

浩道 クラシックギターで慣れているので。フォークギターって弦と弦の間が狭いじゃないですか。だから指で弾くのは苦手なんですよ。

★今のクラシックギターは昔のやつがそのまま?

浩道 ちょっといいの買ったんですよ。国産です。なんだっけ……。「Tsuji Wataru」かな。

※アストリアスギター(株)の名工、辻渡氏が作ったクラシックギター

★フォークギターのボディの傷は、範囲が広いのが不思議ですね。

浩道 ストロークするとき、強弱をつけるために8の字を書くクセがあって。

★その傷は心配になりますね。

愛子 いつも心配されてます。穴があいちゃうんじゃないかとか。

浩道 そんなことはないです。決して古いもんじゃないんですよ。ケセランパサラン始めるときに買ったマーチンです。ずっと弾いてきているので、値段を付けられない価値はあります。プライスレスw

★やっぱり好きな音が出てる?

浩道 まあそうですかね。ギターって使っていくとどんどん乾いていって、音が響くようになってくるじゃないですか。いろんなところで鳴らしてきているので、けっこういい音になってると思います。

愛子 けっこう響くよね。

エレキギターも持っていますね。

浩道 エレキはフェンダーストラトキャスター。多分そっちの方がいいギターです。年代的にはけっこう古い、1960年くらいのサンバーストを持っています。

※サンバーストとは、ギターのボディの中央から周辺にだんだん濃くなっていく塗装のこと。

カズーはいろんな音を出せないか試行錯誤してます

★愛子さんはいつもカズーを吹いていますが、カズーいいですね。

愛子 カズーいいですよね。私は楽器ができないので、カズーだけできるようにしたいと思って吹き始めたんです。でも普通に吹くとマヌケな音。発祥がアフリカなんですよね。ブブセラみたいなサッカー観戦っぽい感覚。もうちょっと管楽器っぽくしたくて、手で覆ったりとかいろいろ考えて、いろんな音を出せないか試行錯誤してます。

★「声がきこえたのならば」で間奏にカズーが入ってきた時にサックスかと思ってしまいました。音色もフレーズもジャズっぽくて、サックス感出てますね。

愛子 良かった!サックス意識してました。すごい! 伝わった。

浩道 ボブ・ディランの「風に吹かれて」のカバーのときは違う楽器をイメージしてカズーやったりとか。

愛子 ね。これも当てて欲しいですね。

★どんな音でしたっけ。聞き直します。

※あとで確認したら、なんと二胡の音色を再現していた!

YouTube「Blowin' in the Wind / Bob Dylan(Cover) /Let's sing a song in Japanese

www.youtube.com

★カズーはまるいところにある何かが振動している。

浩道 そう、ここにあるフィルムが。おもちゃで自分で作れますよっていうのもあるんで。オリジナルを協賛してくれるところを探してます。愛子モデル。

愛子 今度初めてライブで、歌わずにギターとカズーだけの演奏をやってみようかな、と思っています。

★かっこいいー!

ひろくんのバンドは割と渋いとこいってたよね

★ふたりとも埼玉県立草加東高校出身ですね。軽音楽部があったんですか?

浩道 うちらの時代にはなかったんです。でも文化祭には出ました。

愛子 私はただ部活に励む女子でした。バスケ部。バスケに情熱を捧げて。

★当時お互いを知っていたんですか?

浩道 同じクラス。

愛子 2年と3年いっしょだったのね。

★文化祭とかでやっているのは見ていた?

愛子 見てました。

★曲は何をやっていたんですか?

浩道 その時に流行った曲をやっていたんですよ。何やってたっけ……。グレイとかハイスタンダードとか、あと何だろう。

愛子 あれやってたじゃん、「走る走る~♪」。

浩道 ああ、やってた、爆風スランプ

愛子 他の人たちに比べて、ひろくんのバンドは割と渋いとこいってたよね。ユニコーンやってなかった? いいなあって記憶はある。

★その時はまだ曲は作ってなかった?

浩道 その時はバンドのメンバーが作った曲をやってましたね。

愛子 青春だね。

物心ついた時から漠然と歌をやりたいなって思ってたんです

★愛子さんは当時は歌ってなかったんですか?

愛子 歌ってなかったです。

★愛子さんの声を聞いたら、音大出身じゃないかと思ったんですけど。

愛子 音大じゃないです。

★いつ歌に目覚めたんですか?

愛子 もう物心ついた時から漠然と歌をやりたいなって思ってたんですけど、現実的にはそんな浮き世離れしたことは仕事にはできない、っていうクールな学生として過ごしました。やるなら仕事としてちゃんとやりたいけど、そこに紐付けられないなって思ってたんで、みんなに言わないようにしてました。オーディションもいっさい受けず。

★じゃあどうやって技術を培ったんですか?

愛子 技術は………培ってないですね。

★生まれつき!?

愛子 特に家系でも誰も歌のうまい人はいないですし、なんで私がこんなに歌が歌いたいと思ったのか自分でもよくわからないですね。

★前世とか。

愛子 それならかっこいいですけど、ただただ一番やりたいことといえばそれかな~って。

★やたら歌ってたんですか?

愛子 やたら歌ってました。家の中で枕に口をつけて内緒で歌って、中学生の時に。

★お風呂場とかでは?

愛子 お風呂場でもよく歌っていて、親から「5軒先まで響いている」って言われてやめました(笑)。

★下手なら嫌だけど、きれいな声ならみんな気持ちよく聞いていたのでは。

愛子 それならいいですけど。そのときからフトンの中で歌ってました。机の下に入って響かないような声で歌ったり。

★そんなに歌いたかったんだ!

愛子 二十歳のころに、人生は一度きりだ、ちゃんとやろう、って思って、真剣に歌をやり出しました。

★具体的には?

愛子 ボイトレみたいなのに通い出しました。歌だけでやっていけるように。

ある時電車の中でばったりあったんですよ

★ふたりはどうやってユニットを組んだんですか?

浩道 高校卒業して以来全然連絡を取ってなかったんですけど、ある時、電車の中でばったりあったんですよ。「おお!」って。

愛子 「すっごい久し振り!」って。

浩道 「今何やってるの?」って。僕はその時ロックバンドでギターボーカルやってたんですけど、愛ちゃんは仮歌の仕事を。

★仮歌はうまい人しかできない仕事ですね。

※仮歌とは、作曲家が自作曲をレコード会社のコンペに提出するときに、歌手にメロディーを歌ってもらって録音すること。

浩道 それでそのとき遊びでスタジオ入ってみようよ、と。ふたりで遊びで曲作りとか始めて。

★絵が浮かびますね!

愛子 楽しかったね、自由で。

★即興でやるみたいな?

浩道 その頃はそこまで何も考えてなかったね。とりあえず合わせてみようっていう感じだっけ。最初にカバーとかしたっけ。覚えてないな。

愛子 カバーはしてなかったよね。本当にひろくんもやりたいものを弾いて、私もやりたいように歌って、今とあんまり変わらないかもね。即興みたいなのは最初からあったかも。

★それまで曲を作るみたいなことはなかった

愛子 ありました。あったんですけど、あんまり好きじゃなかったんですよ。歌詞を書くのは恥ずかしいことだ、って思ってて。自分の中から出てきたことを自分で歌うなんて……、みたいな部分があって。

浩道 作曲家さんがプレゼンに出すときには歌詞があった方が先方の耳に留まるんで、仮歌入れるときその時の歌詞を瞬時に書いて歌って、みたいなことをしたって言ってましたね。

愛子 コンペです。それで、基本的にラララーとかでもいいんですけれど、もっとイメージがわかりやすいように歌詞もつけたいって言われて、その場で曲に歌詞をつけていって………。

★もしかして言葉を生み出す才能があったと。

愛子 そうなんですかね。たぶん学校に通ってないし作曲方法もがっちり学んだことないので、逆に自由度が高くて、何でも浮かびやすかったかもしれないです。

★カバーいっぱいしていれば勉強になりますね。

浩道 カバーっていっても僕、コード譜見ないんですよ。実は。

耳コピですか?

浩道 最初に全部メロディーを覚えます。だからコードは多分正規のものとは違うんですよ。むかし中学校のころに買った譜面しかないんです、サザンオールスターズの。

愛子 すごい!

浩道 凄い複雑なのはネットで見ますけど。

※その2に続く

jitsuni.hatenablog.com

※ ⇓ ケセランパサラン公式ホームページ。

kesepasa.com