山口愛子さん(ボーカル/カズー)と片野浩道さん(ギター/コーラス)のふたりからなる音楽ユニット、ケセランパサラン(Keseran Pasaran.)の インタビューその3です。
その1はこちら。⇓
その2はこちら。⇓
恋愛の歌は、けっこうないです
★世の中の歌って多分8割はラブソング、恋愛の歌じゃないですか。でもケセランパサランはラブソングが1曲しかないのではありませんか? 「愛」のうたはあるけど、「恋」の歌が1曲しかない。
愛子 恋愛の歌はないです。けっこうないです。
★世間の歌は若い世代に向けて作ってるからでしょうか。ケセランパサランはもっと大きい歌なんですよね。
愛子 「恋のはじまり」っていう曲は、恋に特化した歌で、ケセランパサランとしては珍しいんです。
★ただしloveではなくてLikeって歌ってるけど。
愛子 面白い!
★最初は漫然と聞いていて、何回目かに始めて「そんなこと言ってたのか!」と気づくことが多いんですけど。
愛子 私もそんな感じ。それでも「ひびけ」みたいにシンプルだから、すっごい入ってくるじゃないですか。
★「まじない」は子供をあやすときの歌とかそういう感じですね。おまじないの曲。「月が窓からハローハロー」の部分は次のアルバム「ケセパサゆかりの音楽会」の1曲目「Hello」につながる。
愛子 気にしてなかった!
浩道 「ハローハロー」っていうのは、当時沖縄に言ったときに、「沖縄でハローハローって歌い続けてね」って言われて。
愛子 そうだよね。
浩道 「月あかりの下で」も、なんか聞いたことのある曲なんですよね。
愛子 サントリーとかのCMにあったような、と思って調べてもないんですよね。
浩道 ないんですよ。
★いい曲って懐かしいんですよ。
浩道 今になってこの曲好きだって言う人がいるんですよ。
愛子 そうだよね! 新井(由木子)さん(Pelekas Book&Gallery店主。イラストレーター)も今ブームって言ってた。大さん(和伊話云<わいわい>店長)も好きだって。
自分たちが死ぬときに棺桶に入れて欲しいくらいの1枚にするという気持ち
※2017年10月にリリースされたアルバム『十年草奏』について、ホームページで「今作は<別れ>をテーマに製作しました。そのきっかけになったのも、gtヒロミチの祖母が楽曲製作時に亡くなったことにあります」と書かれている。また1曲目の「バースデーソング」では死を「いつでもどこでも何度でも生まれ変われること」と捉えている。
※YouTube「十年奏草 / ケセランパサラン」トレーラー。
愛子 「十年奏奏」を作ったとき、最初は「リバース・デイ」(Re-Birth Day。生まれかわりの日)がテーマになっていて……。
浩道 最初このアルバムのタイトルが「棺桶」になる予定だったんです。
愛子 そうなんです。
★それはチャレンジング!
浩道 意味としては、自分たちが死ぬときに棺桶に入れて欲しいっていうくらいの1枚にするという気持ちをこめて。
愛子 あと死というものを感じる曲は「オモイデバナ」もそう。
浩道 前回の「ケセパサゆかりの音楽会」は出逢いのことを歌いました。今回は裏返せば死に直結しているよう曲がけっこうあって、「おかえり」もお母さんが亡くなっている曲と取る人もいだろうし。
愛子 だから「バースデーソング」を一番最初に持ってきて、「リバース・デイ」的な感じだよね。
浩道 いろいろ相談して、ちょっと「棺桶」はリスキーだねって(笑)。
日本語で唄おうは、洋楽も歌詞がすっと入って来たらいいよねというので始めた
★YouTubeで発表している洋楽カバー「日本語で唄おう」の歌詞は全部自分達でやられているんですよね。
浩道 そうなんです。
★あれ、わかりやすいですね。
愛子 本当にありがとうございます。そう言ってもらえると。
浩道 愛ちゃんは曲を聴くと最初に歌詞を聞くタイプの人なんです。だから洋楽も最初に歌詞がすっと入って来たらいいよね、というので始めたものなんです。
★全然イメージと違う歌詞ってありますもんね。
愛子 そうなんです!
浩道 それがけっこう面白くて。
★そんなことを歌っていたのか、みたいな。
愛子 「アローン・アゲイン」(ギルバート・オサリバン)ってけっこう……。
浩道 すごいよね。
愛子 「あのマンションから飛び降りてやるのさ」、なんて。
浩道 あんな爽やかなのにあんなこと歌ってるって。
※YouTube「Alone Again(Naturally) / Gilbert O'sullivan(Cover) / Let's sing a song in Japanese」
★「セプテンバー」(アース・ウインド&ファイアー)も凄いですよね、アコースティックでカバーしちゃうって。あんなにかっちりしたリズムの曲だったのに。
愛子 アコースティックというイメージがない曲もやりたいなあ、と。
※YouTube「september / Earth,Wind & Fire(Cover) / Let's sing a song in JAPANESE」
浩道 本当はもっとパンクとかロックとか……。
愛子 やりたいねって。
浩道 逆に僕は、けっこう詳しいほうなんで、これ超有名でしょと思う曲が、「実は誰もが知っている曲じゃないんだよ」って愛ちゃんが……。
★なるほど。
浩道 曲の選択も愛ちゃんがジャッジしています。
愛子 そこは私が、世間のあまりよくわからない人代表で。
浩道 知名度が大事ですね。CMで使われてたとか。
愛子 みんなが知ってる曲を日本語に直しているのが面白いから。
★そのギャップが楽しいわけですね。
浩道 前からの知り合いの人が、「どうかケセパサは若い人たちだけに目を向けないでほしい!」って言ってました。
★けっこうご高齢のファンもいますよね。
浩道 小さい子もお爺ちゃんお婆ちゃんもいらっしゃいます。だからどうか若い人たちだけじゃなくて、みんなが知っているような曲をやっていって欲しいと。その言葉がずっと残ってますね。
愛子 ね。「古き良き」にも大事にしたい部分あるかもね。
★さっきも話しましたけど、コードも耳コピですか?
浩道 そうですそうです。
★凄いですね。
浩道 全部そうです。「セプテンバー」なんか勝手にコード進行を作っちゃってるんで。ジャズっぽい、普通じゃないコードもけっこう使っていて、「ブロウ・イン・ザ・ウインド(風に吹かれて・ボブ・ディラン)」もそうかな。「スタンド・バイ・ミー」も全然変えてますからね。これはけっこうよくできたって思ってます。
※YouTube「STAND BY ME /Ben E.King(Cover) / Let's sing a song in Japanese」
いろんな人のコンセプトや思いを乗せてコラボした方がいいなあ
★野望は? とりあえず当面の何か。これからアルバム出すとか。
愛子 いろいろと計画はありますよ。
浩道 うちらは曲を作るのが得意なんですよ。
愛子 好きなんだよね。
浩道 だからもう、どんどん配信していこうかと思っていて。たとえば焼き芋の歌を作ったんですよ。
愛子 バラードにしたんですよ。
(iPhoneで聞かせてもらう)
※その後YouTubeにアップロードされました。「焼き芋のテーマ / ケセランパサラン」
★メロディは「石焼き~いも~」なのにコードが違って違う曲に聞こえますね。そういえば子供のころ、隣に石焼き芋屋があった……。前はお豆腐屋、斜め横が和菓子屋さん。
愛子 そういうころを想い出させるような歌にしたかったんですよ。
浩道 もともと焼き芋やさんって八百屋さんなんですよね。冬場は稼ぎがないから焼き芋を売って回っているって、誰かから聞きました。
★そうなんですか。
浩道 実はこの曲イオンで流れているんですよ。埼玉の何店舗かのイオンの焼き芋コーナーで流して貰っていて。こういった特化した曲を作っていきたいなと。
★勝手に作ってスーパーが流すとか。すごい展開。
浩道 そういうのをどんどんやっていくので、いい話があったら教えてください。
愛子 なんか自分達の思ったことをただ音源にするよりも、飲食店の人とかいろんな人のコンセプトや思いを乗せてコラボした方がいいなあ、っていう風に最近思ってきたのね。
浩道 前までは作るのは得意で作ってただけだったんですよ。それをこれからはちゃんと発信していくためにどうするべきか、っていうのを勉強していて。
★その先にあるのはCMソングとか。
浩道 そういうのとか。
愛子 ゆくゆくは。それも野望に入るのかな。そういうのでいくつか作った曲あるよね。カレー屋さんの歌とか。
浩道 あとよく行く街の曲だったり。栃木県の鹿沼市っていうところあるんですけど、そこの曲作ったり。
愛子 鹿沼で作ったんだよね。
浩道 そいうのをLINE@(ラインアット)とか、そういうところで配信していこうかなと思っております。
愛子 現代版「ファンクラブ通信」的な感じ?
浩道 これから年賀状作ろうと思っていて。で、年賀状届いた人だけしか聞けない音楽とか。そういうのもちょっと考えてるんですよ。
愛子 あと15周年は今から何か大きいところでやるのを考えています。それは野望です。それはちょっと楽しい感じになると思います。
★メジャーデビューしたい、ということは考えていない?
愛子 考えてないです。
浩道 今はメジャーデビューというよりは個人の力でやっていくしかないかなって思っているところがあって。
★メジャーとなると事務所の方向性に相当左右されますからね。今は個人でもできますし。
浩道 うちらは有名になりたいっていう方じゃないんですよ。
愛子 分けるなら職人の方みたいに、コツコツ曲作って、誰だかわかんないけどあのCMで流れていた歌よかったよね、って言われたい。
★曲を作るというのが一番最初にあるんですね。
愛子 そうですね。求めてくれる人のために作りたい。
★ネット時代だから、だんだんそういう活動でもやっていける感じが今はあるんですね。
愛子 旅せずとも届ける、聞いてもらえる方法はあるんです。
浩道 どんどん新しくなりますからね。今ではライブ配信で投げ銭もらえたりするんですよ。
★凄いですね。
浩道 そういうので生活している人もいるので。わかんないですね。選択肢がありすぎて。
愛子 自分達がどうしたいかを決めてそこに突き進まないと、もういろんなことやろうとすると全然ダメですね。
浩道 当面は「日本語で唄おう」のYouTubeの登録者数を増やすのと、このLINE@で密につながっていくというのを今後の目標に。
愛子 なるべくシンプルにね。
浩道 とりあえずホームページから全部わかりますよとか、そんな感じにしたいですね。
★ツアーの予定は?
浩道 ちょいちょい、ショートツアーですね。12月には栃木、1月には沖縄行ってとか。1週間2週間とかじゃなくて、ちょっとやってすぐ帰ってくるみたいな。
愛子 旅をしながら、ライブをして新しい人に出会ってっていうのが生きがいのミュージシャンもいるんですよ。私達は、新しい曲ができ上がった時がすごく生きがいを感じる。
浩道 10年目にして発見しました。
愛子 よかったです。
★草加市民としても良かったです。本当の草加のミュージシャンです。
以上です。
※ ⇓ ケセランパサラン公式ホームページ。