草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

BiSHの「サラバかな」によって我々はBiSHからBiSH後の世界を託されていた

サラバかな」は2015年5月27日に発売されたインディーズ1作目のアルバム『Brand-new idol SHiT』に収められた曲。コンサートの定番曲の1つで、終盤に歌われることが多い。

作詞が竜宮寺育で作曲が慎乃介(蟲ふるう夜に)。竜宮寺育が作詞したBiSHの曲は10曲あるが、究極の空耳ソング「OTNK」に代表される高度な技巧と、意味よりも響きや字面を優先するかのような解釈困難な高い芸術性が特徴。

「サラバかな」もまた歌詞が難解。

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↑ BiSH / サラバかな [FREE LiVE "stereoなfutureにしないYOKOHAMA"]@横浜赤レンガ倉庫


イントロはスロー。バラードかと思わせて、すぐにアップテンポになる。

歌い出しは3拍休符があってから入る。もったいぶっている。余裕見せてる。

叶わぬ口は あるとき命徒然羽交い締

さあ、いきなり意味がつかめない。

サビは逆にアウフタクト(小節の手前からフレーズが始まる)の連発だ。

ち・りー / ゆ・くー/  ごーごに

わ・ずー / か・なー / ひ・かりが

これは「静かな湖畔」の「カッコー、カッコー、カッコカッコカッコ」のリズムだ。
そしてベートーヴェン交響曲第9番「合唱つき」の第4楽章中盤、喜びの歌のメロディーがまさにこのリズムになる。「マーチ」と呼ばれるパートだ。

BiSH行くぞー!」という掛け声が入るように、「サラバかな」もまたマーチなのだ(テンポはだいぶ速いけど)。

「是までの堰を 外して進める」「どこまでいこう 終幕へ」

我々の進軍をせき止めていた「堰」がついに開放された。先に進む時だ。終幕まで行こう。

サビの言葉はちょっと理解できそうだ。

散りゆく午後に わずかな光が 醜い跡地に 紅誘うと この手を眺め
散りゆく午後に わずかな光が 汚い景色に 藍の気引かれる
追うとなく添うなく 息吹が芽生え 僕の代わりに均して

この午後、「僕(BiSH)」は消え去ろうとしている(散りゆく)。夕焼けで紅に染まり、やがて夜が訪れ、空に藍の幕が引かれていく。

「僕」が開墾した土地はまだ醜く、景色は汚い。でも「僕」の奮闘も無駄ではなかったのか、「僕」を継ぐ新しい生命の息吹が芽生えてきているようだ。

後はまかせた。「僕」の代わりにこの荒れた土地を均(なら)してくれ。

「サラバかな」は別れの歌だけど、この歌によって、残された者たちは使命を託されたのだ。

wackの後輩グループ、BiSHが作ったグループ、BiSHに憧れているアーティストたち、そしてすべての清掃員たちよ、さあBiSHの代わりにこの地平を均そう! 新しい息吹を育てよう!

BiSH行くぞー!