草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

人新世の「資本論」を読んだあとのメモ

1月にNHKEテレの「100分de名著」で斎藤幸平による解説でマルクスの『資本論』の新解釈を放映していた。その内容に感銘を受けたので、『人新世の「資本論』(斎藤幸平著)を読んだ。

人新世とは

書名にある「人新世(ひとしんせい)」とは何か。人類が地球の地質や生態系に重大な影響を与えている地質時代の名称だという。

ではいつから人新世が始まったのか。1万年以上前に農耕が始まったとき。1945年に最初の核実験が行われたとき。1950年代に大量生産大量消費が進み人口が急激に増加したとき。などの説がある。

現代は人類によって汚された地質を積み重ねつづけている時代なのだ。

人新世の最後は人類の滅亡

現在の環境危機、気候変動は人類に災厄をもたらし続けている。格差が極端に広がり、大企業やほんの一部の富裕層が土地や資源を収奪し貧困層を苦しめている。

SDGsやグリーンエネルギーの運動はごまかしだ。アヘンだと齋藤幸平は書く。SDGsで免罪符を得て、更に一儲けしようとしているだけ。資本主義をやめなければ人類は生き残れない。

資本主義をやめて何を始めるのか。資源を共同管理してみんなで使う。生産手段を共有する。経済成長をやめること。脱成長コミュニズムだ。

たいへんな問題提起であり、運動の書である。資本主義を終わらせようという本がベストセラーなのがすごい。

加速主義とは

齋藤幸平は加速主義にも批判的だ。

加速主義とは、資本主義の発展を加速させて社会変革を生み出そうという思想。宮台真司がかねてより標榜している。でも宮台真司の加速主義はどうも一筋縄ではいかない。トランプ大統領を支持していたのも加速主義ゆえだったという。どうやら資本主義の発展を加速させて崩壊まで突き進むことを期待している。崩壊してから立て直すべきだと。

ビデオニュースで、齋藤幸平が出演したとき、宮台真司との間にどんな対決が見られるかと期待したが、意気投合していた。宮台は齋藤幸平の思想の補足、強化をした。宮台は斎藤に大きな期待をかけていることがわかった。

資本主義を加速している間に気候変動も経済格差も修復不可能に陥ってしまう。資本主義を加速させて崩壊させる方法ではなく、資本主義を止めて、脱成長コミュニズムによって立て直さなければならない。

渋沢栄一柄谷行人

渋沢栄一の「論語と算盤」を4月のNHKEテレ「100分de名著」で紹介していた。渋沢栄一はたくさんの企業と公共事業を創建した。「論語と算盤」とは公益を追求する道徳(論語)と利益を求める経済(算盤)が両立することが国民の幸福へ道だと説いた。資本主義は「論語」を失ってしまった。渋沢栄一の理念に通じるところがあるのではないか。

柄谷行人が2000年に提唱したアソシエーショニズムの運動とも通じるのではないか、と思うのだが、どうも相容れないらしい。