NHK、Eテレ、「100分de名著」、12月のテーマはフランスの社会学者ブルデューの『ディスタンクシオン』でした。解説したのは岸政彦。その気さくな語り口で難解なブルデューの大著が身近な問題として理解できたような気がします。
その反響が大きかったのか、あちこちの書店の人文コーナーでブルデュー祭りが繰り広げられているのを見ました。
「ディスタンクシオン(distinction)」はフランス語で、区別、差異、格差、卓越といった意味です。英語では同じ綴りで「ディスティンクション」です。
自らの意志で選んだつもりの「趣味」が、社会的、経済的地位によってあらかじめ決定されていたのだ、ということが解き明かされました。
また、その趣味に対する熱意は、趣味界における地位を賭けた闘争に費やされるというのです。
さて、BiSHというアイドルグループがあります。このグループのレパートリーに「My Distinction」という曲があるのです!
メンバーのリンリンが作詞したものです。
100分de名著での「ディスタンクシオン」では、高尚な趣味でライバルとの闘争に勝ち続ける、恵まれた階層の人物を思い浮かべがちでした。
しかしBiSHのリンリンの描いた「My Distinction」は、嫉妬と自己嫌悪に陥っている、敗者の精神世界でした。
人のこと 繰り返し けなしては 口に出せず
あの子ずるいとか 思ってたらきも
「きも」が歌い上げられる曲をほかに知りません!
リンリンがブルデューを知っていたかどうかはわかりませんが、「ディスタンクシオン」の裏の側面が描かれていると思いました。
清掃員たち(BiSHのファン)が強く共感する名曲のひとつです。