5月11日(水)、「日本の響(にっぽんのひびき)…草加の陣2018」というコンサートの記者会見が行われました。
場所は草加市文化会館内のレセプションルームでした。
同コンサートは、9月8日(土)に草加市文化会館ホールで開催されます。2016年に第1回が開かれ、今年は3回目となります。
記者会見にはコンサートの出演者のうち3組4人が出席しました。
・中村明一(あきかず)さん(尺八奏者で、コンサートのプロデューサーでもあります)
・鬼太鼓座(おんでこざ)の松田惺山(せいざん)さん(管楽器と鬼太鼓座の音頭取り)と吉洋(よしひろ)さん(太鼓)
・森田彩さん(民謡歌手、草加出身在住)
司会は草加市文化会館館長の山崎大樹(ひろき)さんでした。
また草加市文化協会理事長の長谷部健一さんも出席していました。
レセプションルーム後方には、「草加市文化会館友の会」会員の方々も出席していました。
左から松田惺山さん(鬼太鼓座)、中村明一さん、森田彩さん、吉洋さん(鬼太鼓座)。
「日本の響…草加の陣2018」コンサート情報//////////出演アーティスト////////////////////
◆鬼太鼓座(和太鼓)
◆ネーネーズ(沖縄音楽)
◆仙波清彦&カルガモーズ(邦楽囃子)
◆澤田勝秋(津軽三味線)
◆杵屋裕光一座 with S(長唄三味線)
◆森田 彩(民謡)
◆中村明一(尺八)/FOREST//////////司会////////////////////
◆ピーター・バラカン(ブロードキャスター)◆田中隆文(「邦楽ジャーナル」編集長)
//////////チケット////////////////////
※全席指定・未就学児入場不可
S席:7,000円(友の会 6,700円)
A席:5,000円(友の会 4,800円)
B席:3,500円
//////////発売日////////////////////
◆友の会先行:2018年4月15日(日)10:00から
◆一般販売:2018年4月21日(土)10:00から
//////////発売所////////////////////
草加市文化会館チケット窓口ほか
※電話予約も可能です。
詳しくは草加市文化会館ホームページへ。
記者会見
山崎大樹 本日はお忙しい中、お集まり頂きましてありがとうございます。
それから友の会の皆様方には、草加の陣のイベントはこういうふうにして広報されて記事なって仕上がっていくんだというプロセスを見ていただこうかと考えて、声をかけさせていただきました
今日、ご出演の皆様から3組の皆さんにご出席をしていただいております。
尺八奏者の中村明一(あきかず)さん。このイベントのプロデュースもお願いをしている方でございます。
鬼太鼓の松田惺山(せいざん)さん、吉洋(よしひろ)さん、それから民謡歌手の森田彩さん。
今回で3回目を迎えますけども、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まったということに触発されて、和のイベントを草加で何か立ち上げられないかとプロデューサーの中村明一さんとも相談して、草加を日本の音楽の拠点にしていこうという志から、ムーブメントとしてこのイベントに取り組むことになりました。
申し遅れましたが、文化協会の常務理事の山崎でございます。
開会にあたりまして主催者の草加市文化協会の長谷部理事長よりご挨拶をいたしますので、よろしお願いします。
長谷部健一 皆さんこんにちは。報道各社の皆さま、そして出演者の皆さん、また友の会の皆さん。今日はようこそお越し頂きました。
今日は新年度始まって11日目ということでたいへんお忙しい中、また今日は強風が吹き荒れていまして、そういった日にようこそお越しいただきました。心より感謝申し上げます。
草加市文化協会は、草加市の文化芸術の振興によって市の福祉の向上を図るということが大きな柱です。
もうひとつの柱が、文化会館のホールとコミュニティ棟を指定管理者として草加市からお預かりして、市民の方が安全に快適に使用できるようにすることです。
日本の響につきましては、もちろん芸術文化の振興、とくに日本らしいおもてなしの心を出そうということで、今回3回目になるわけですけど、一流の芸術家を草加に招待して、草加市民のみなさまに、一流の芸術を味わっていただくということですね。
そしてもうひとつ、草加市民が草加市らしい文化を発信していこうということも大事な柱になっています。
今回は森田彩さんが初めて参加します。森田さんは草加生まれ草加育ちです。文化会館ともいろいろ関わりがある。平成28年に日本民謡協会の内閣総理大臣賞争奪戦で見事優勝されて、翌年「日本民謡フェスティバル2017」でグランプリを獲得された。
今我々は森田彩さんを日本一の民謡歌手だと呼んでもいいかなと、思っています。草加を代表するすばらし音楽家であるということでございます。
今年は草加市制施行60周年という記念もあります。この記念すべき年に、「日本の響…草加の陣」、3回目になりますけど一流の芸術家プラス草加の代表選手が入ってみなさんにお披露目できるということは、私達もたいへん喜ぶところですし、市民のみなさんも期待されているんじゃないかと思います。
今日の記者会見を通じて、皆さんにアピールさせていただいて、ぜひ多くの市民のみなさんにご来場いただき、日本の響を楽しんでいただきたいと考えています。
以上で簡単ではございますが理事長のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
山崎 このイベントのプロデュースもお願いしている中村明一さんからこれまでの経緯とか、周辺状況について、お話をしていただこうと思います。よろしくお願いします。
中村明一 皆さんこんにちは。私は作曲と尺八演奏を主にしております。またこのようなコンサートのプロデュースも、今までにいろんな形でさせていただいております。
山崎さんがNHKに務められていたころに、何度か放送やイベントでごいっしょさせていただいていて、そこでいろいろなことを話し合っていた。
山崎さんがこちらにこられて、何かオリジナルなことをやりたい、ということでしたのでご提案をさせていただいたわけなんです。
これはあたかもどこにでもありそうですが、歴史的には邦楽の新しいアーチストたちが集まったフェスティバルというのは、初めてのことなんです。
ですからまさにオリジナリティのあるイベントと、またコンサート、フェスティバルと言えると思います。
これが草加を足がかりに、全国に、そして全世界に広がっていくといいなと私は思っています。
それからこれは私の大きな自慢なんですが、私がお声をかけさせていただいた素晴らしいアーチストの方がみなさん同意していただいて、今回も鬼太鼓座さん、それから森田彩さん、そして、ネーネーズ、津軽三味線の澤田勝秋さん、長唄三味線の杵屋裕光さん、囃子方の仙波清彦さんといった、もう錚々たるメンバーが集まります。
これらの方々をどこかで一組見るということもなかなかたいへんなことですけども、一堂に会するということはほかにはどこにもありません。それはほんとうに自慢のできることだと思いますし、これから大きな広がりを生んでいくと思います。
それはひとつには日本の文化が非常に特殊ですばらしいものだというところに基づいていることだと思うんですね。
最近はテレビの番組で、外国の方が来られて、日本の食事であるとか、職人芸であるとか、そういったものを体験されて、驚いたというお話を見られたりしていると思いますけど、実は鬼太鼓座さんもそうですけど、私もこれは2、30年前から感じていたことなんです。
海外に行くと、我々のやっているようなことは非常に高く評価されて、お客さんもいっぱい来ていただけます。
たとえば尺八も世界中に今広がっていて、アメリカでもヨーロッパでもやっている人は多いです。最近は中国や台湾でもすごく大きな広がりをもっています。ワールド尺八フェスティバルという、4年に1回のオリンピックのようなフェスティバルも行われているぐらいです。
ぜひ皆さんに応援していただいて、またいろいろな方にお知らせいただいて、このフェスティバルをいっしょに作っていっていただけたらと思います。よろしくお願いします。
尺八を演奏する中村明一さん
山崎 草加の陣に参戦していただいている鬼太鼓の皆様方、そして森田さんに順次、ご挨拶をお願いしたいと思います。
松田惺山(せいざん) (マイクなしで)みなさんこんにちは! 鬼太鼓座の音頭取り、松田惺山(せいざん)と申します。
音頭取りってなんのこっちゃという話ですけど、苦情承り係ですね。だいたい接着剤として活動させていただきます。
このたび、「日本の響…草加の陣」、長谷部様、山崎様の勇気あるご決断に(笑)たいへん感謝しております。
私達は旅芸人ですので、格調高くも芸術的でもなんでもありません。ただ一生懸命太鼓を打つ、笛を吹く、尺八を吹くという集団であります。
自分たちが持ってる思いを世界中の人々に伝える。日本、日本の文化というものを伝えるんだ!というグループで、48年活動してます。
(マイクで低い声で)これはマイクロフォンという非常に便利なものなんですけど、こういうものを使わない、だまされない。
(マイクなしで大きな声で)私の声はこれなんです。
(マイクで低い声で)でもね、ちょっと工夫をすると、いくらでも変えられる。太鼓の音は……。
(マイク無し大声)変えられないんです!
日本の音、日本の文化が持っている芯というのは非常に深いです。アフリカへ行こうが、南米に行こうが、北極圏までは……行かない? 北極圏まで行こうが伝わります。
一生懸命やれ! わざとらしくするな! それだけを鬼太鼓座というグループは……、ごめんなさい(笑)こんな話でして……、やってます。
ですから、このような、ちょっとかなり特殊なグループをこのような場にお招き頂きまして、まことにありがとうございます! ということが伝えたかったんだということであります。
え、当日は、今日は裸にはなるわけにいかないですよね(吉さんに)
吉洋(よしひろ) そうですね。
松田 着てますけども。我々の条件は基本的に衣装演出はほとんどどうでもいい。最後はむき出しの命をみなさんにどう伝えられるかですから、肉体すらも邪魔である、というところまでいけばいいんですけど、なかなかそこまでいかないのが我々の悩みではありますが、そのへんのところをお楽しみいただければと思います。
鬼太鼓座の松田惺山でした。
次は吉洋。彼は鬼太鼓で大太鼓という大きい太鼓を打ちます。シンボルであります。
(マイクを渡す)
吉洋 この流れでマイク使えないですね(笑)。
(マイクを置く)(拍手が起こる)
鬼太鼓座の吉と申します。
舞台の上では衣装を着ながら太鼓を叩くときもありますし、今日持ってきてる太鼓は比較的小さめなものなんですけど、大太鼓叩くときにはふんどし1丁で叩いてます。
さきほど中村さんの話の中で、海外に行ったときの日本の文化、演奏に対する評価というお話ありましたけど、鬼太鼓座にも太鼓を勉強したいと入ってくる外国人がとても多いです。
この5年ぐらいの間で、約10人ぐらい。もうほんと各地。近いところでは台湾から、遠いところではイスラエルですとかアルゼンチンですとか、そういうところからいろんな人が太鼓を勉強しにもやってきます。
私達の合宿所のひとつが埼玉県唯一の村の東秩父村という村の、山の中のほうにある廃校になった小学校をお借りして、そこで共同生活をしながら日々太鼓の稽古をしているんですけど、そこにも今回出演させていただくメンバーの中のひとりは台湾系アメリカ人、ひとりはイタリア人と日本人のハーフがいます。
私達の考え方は、日本人の文化だったり精神だったりをいかに激しく表現していくかということなんですが、もはや外国人もその中に参加して、あまり国籍とかは関係ないような活動になってきていると感じます。
当日はいちばん若いメンバーは21歳。そこから太鼓を打つ人間は私がいちばん年上でよんじゅう……あ、今日11日? ああ!今日私誕生日です!
(笑いと拍手)
46歳まで。
埼玉はホームだと思っているので、ぜひ鬼太鼓座の演奏聴いてもらいたいと思います。よろしくお願いいたします。
合宿所はその東秩父村というところの、人口3000人しかいない……。
松田 3000人切りました。
吉 切りましたね。埼玉県民でもめったに行かない、ほんとうの山奥です。
もう15年ぐらい前に廃校になった学校を村からお借りして、そこで今7人のメンバーが共同生活ですね。毎日日替わりで食事を作り、学校の掃除をし、朝は6時から村の通りを約10キロマラソンする。
1日大体平均すると5時間ぐらい太鼓をひたすら稽古して、そこからコンサートのツアーに出かけていくという生活をしています。
村の方たちともつい先週もお祭りをやってきたんですけども、猟師さんにはイノシシやシカを差し入れていただいて、近所の人には野菜をたくさんいただいたりですね、そういうすっかり山暮らしをして今、6年目ですね。
その前は静岡県の富士市というところで10年。さっき松田から旅芸人というお話がありましたが、そろそろここに定着できるかな、と思うと何かがあって、またどこかに行く、という人生を歩んでまいりました。埼玉県にはなるべく長くいたいと思っておりますので、皆さま今後ともよろしくお願いいたします。
鬼太鼓座の松田惺山さん(尺八)と吉洋(よしひろ)さん(太鼓)
山崎 どうもありがとうございました。それでは最後にご当地草加の森田さんお願いいたします。
森田 ありがとうございます!
(マイクが回ってくる)
いや私も歌い手なので。(マイクを辞退する)
松田 ごめん(笑)
森田 インチキはしないでいきます。(笑)
さきほどからご紹介いただきました地元出身で現在も地元で活動しております、森田彩と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私は草加で育って今も草加にずっといさせていただいて、ずっと民謡は続けてきたんですけど、このたびちょうど市制60周年の前に、優勝を2年続けていただくことができて、すばらしいメンバーの方とこうやってご一緒できることが決まり、私もびっくりしております。
今日もいろんな話をうかがって、なんでこんなところに呼んでいただけたんだろうというような(笑)、ほんとに驚きなんですけれども、地元を盛り上げることに協力したいなと思うし、私ができることだったらいっしょにさせていただきたいなと思っているので、今回のチャンスをいただけたことはすごくほんとにありがたいことだなと思っています。
で、民謡って、三味線があったり、尺八があったりで、どうしても自分ひとりでは成り立たない部分があるんですけど、今回は中村さんのお力をお借りして、新しいことにもチャレンジさせていただけるみたいなので(笑)、どこまで話していいのかわからないんですけど、私もできる限り、精一杯の力を出して、皆さんにいいものを聴いていただきたいなと思うので、未熟ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございます!
草加市在住の民謡歌手、森田彩さん
山崎 どうもありがとうございました。
それでは、会見に移りたいと思いますが、記者団の皆さん、どなたでもけっこうですから、口火を切っていただければと思います。どうぞ。
記者 過去2回やって、どんな反響がありましたか?
中村 来られた方は5、6時間ずーっと座り続けていたという方が多くて、もう吸い付けられるように見てしまったと。
最初は、まあ6組出るので、1組か2組見ればいいかなとか、またはいくつか見ないでちょっと食べたり飲んだりしてようかな、というお話をされてた方が、もう1回座ったらそのまんまというようなことをよく、聞きました。
それほどみんなテンションが高くて、また、各グループが、それぞれいい意味でのライバル心を持ってますので……。
たとえば、最初に出てこられた伊藤多喜雄さんなども、出演する3日前に津軽三味線3人増やしてくれと、やっぱりほかには負けられない、と言ってきたこともありましたし。そんな感じで各アーチストが何十年もかけて、培ってきたレパートリーの中で、いちばんいい部分を30分出してくるんですね。
ですから非常にクオリティが高くて、どなたも飽きさせない。ほんとにびっくりするようないい演奏していただけますね。それを大きな反響として、いろんな方から聞きました。
たとえば、あるアーチストでは、普段聞いてるよりもここでやる演奏は全然ちがいましたよ、というようなことも聞きました。
記者 前回までの比べて今回の特徴は?
中村 ひとつは鬼太鼓座さんのように大きな編成の方々が出ていだだけること。もうひとつはさきほど理事長からもお話がありましたけれども、草加出身のアーチストとしては初めて森田さんが出ていただくということですかね。
それからもうひとつ言えば、初めて沖縄からアーチストをお呼びするということでしょうか。
記者 邦楽というのは非常にバラエティというか幅が広い。楽器にしても楽曲にしても。これをこちらで年1回集約して発表するという形ですかね。
中村 はいそうです。実はあまり普通の方は意識されていないんですが、これほど多種多様な音楽がある国っていうのはそんなにないんです。
それはひとつは歴史の長さにもあるんですね。
中国も歴史は長いんですが、ひとつの部族が政権を取っていると、また違う部族が来てそこを占領してしまうわけですね。そうするとそこにあった文化がかなりなくなってしまう。
ところが日本の場合はほかの部族が来て占領されたということがないので、たとえば雅楽も、仏教音楽の非常に古いものも、また神楽なども、非常に古いものが残っているわけですね。それから地方によってもいろんな特色がある。
それらがいっぱいある上に、鬼太鼓座さんも私もそうですが、もとの伝統の文化にさらにいろんなものを加えた新しいものを生み出そうとしているわかですね。
沖縄からのネーネーズさんはどちらかというとポピュラーの形態をとってますが、沖縄の文化をつなぎながらそういったものを作ってるわけですね。
ですから非常に多種多様なものがあって、そこの中から現代において何を提示するのがベストなのかということを考えながら、いちばんいい形にしてもらおうと思っています。
山崎 私から言うのも僭越ですが、オーケストラとかオペラとか、いわゆる洋物が依然として多く来日して、全国展開等華々しくやっている。
一方固有の日本音楽である邦楽のほうは、どちらかというと小さくこじんまりとイベントを展開している、ということも感じたものですから、中村さんとも相談して、この際改めて、日本音楽の復権、新しい世代へ引き継いでいかないといけない、日本音楽の火を消すな、というふうな考え方もあってこういうイベントを、しかも東京至近の草加という地でやっていったら、東京でやるのとは違うものができあがるんではないかな、と。
俗にいう地域おこし、地方創生的な精神も含めて、ここに位置づけたと言うふうな経緯があるわけです。
記者 杵屋裕光(きねやひろみつ)さんのバックとしてヒダノ修一さんが去年に続いて今年もまた出る、しかも手数(てかず)王の菅沼孝三さんと共演しますね。これは喧嘩になるのではありませんか(笑) すごいですね!
中村 そのとおりなんです。
ヒダノさんは前回出ていただきまして、ほんとうに素晴らしい和太鼓を演奏していただきました。
今回出ていただくドラムの方は菅沼孝三さんと言いまして、一説には、世界で一番速く叩けるんんじゃないか、と言われているぐらいの方です。ヤマハのドラムの宣伝にために、世界中を回っている方なんですね。だから世界中のドラムをやっている人の憧れでもある。
彼は私といつもやっているんですけど、杵屋裕光さんが前に菅沼さんとやっていたということもあり、今回出演をお願いして快諾を得て、ヒダノさんとのバトルも面白いんじゃないかというようなことをおっしゃられて、それで演奏されるそうなんですね。
杵屋裕光さんは実は「THE家元」という邦楽のバンド形態を最初にやったバンドにも参加した方ですが、そのときよりもさらにパワーアップして、今回出演していただくという形になっています。
山崎 出演者の方に、出演の意図についてお聞きしたい。
吉 ここにプログラムがありますけど、一番最初なんですね。私達の特徴は、音が大きいということです。
ですので、まずは来ていただいた方にまずびっくりしていただく。びっくりしていただければ、私達の役目は終わったという。とにかく当日は7名で力いっぱい演奏します。というのは当たり前なことなんですが、たぶんこういうことやろうとしているだろうなと思ったら、もっとびっくりした、というような……。
まあ内容を考えるのはここにいる松田なんですが、私達座員、演奏者としては、予想をいかにして裏切る迫力のある演奏をするかということを、今稽古しながらも、高めているところです。
松田 今の話をちょっと補足するとですね、鬼太鼓座というグループは、海外デビューはボストンマラソンを走って、ゴール地点に大太鼓を置いといて、そこでゴールしたあとに太鼓を打ってというのが広まっちゃって、現在に至るんです。
そのときにフランスのデザイナーのピエール・カルダンさんも興味を持って、パリのカルダン劇場で1か月公演を組むといって、いきなり2000万円を振り込んできたんですね。
で、なんのこっちゃ!と、よくわかんないけど、行ってみた。公演をしてみた。最初、演奏が終わった瞬間にお客さんは拍手もせず、はーって……。会場から出ていってロビーで、はー、っていう。「なんだろうこれは」という反応だったそうです。
それが1週間たち10日たち、劇場の周りにだんだん行列ができてきた。
で、そのときピエール・カルダンは、鬼太鼓座の大太鼓を演奏するときは締め込み! ふんどしでどうだ!と提案をしてきたそうです。
ですから、最初から鬼太鼓座が別にふんどしでずっと演奏してわけでもなんでもなくて、ピエール・カルダンの提案でそのときからふんどしでやりだした。
日本の響1回目の出演者の林英哲さんがいたころです。
なんだこれは!? 拍手も起きない、というのが、鬼太鼓座の最初のころです。
今年に入ってからアメリカに1か月半行っていました。そのときコンサートの合間にワークショップをいろんなところでやりました。
刑務所に行ってみました。少年刑務所。19歳以下の子が収監されている。殺人の子もいました。
彼等に何を伝えたらいいのか、一生懸命生きるっていうのはどういうことなのか、それが出す音ってのはどうなのか。
彼等が鑑賞している表情が演奏の1秒1秒ごとに変化していく。私達にとってそれが役割だと思っています。
波動によって人間の持ってる何かを揺さぶる。「なんだこれは!」でも構わない。
で、そのときにQ&Aコーナーがあってひとつ質問があった。「鬼太鼓座に入れるのか」と。
「それはあなたが刑期を終えて、きちっとルールに則って出てきたときには入れます!」とメンバーのアメリカ人の女の子が答えました。
彼女は「でも私達の生活は6時前に起きて、6マイル、ほぼ10キロを走るんです。午前中の日課を果たし、稽古をし、料理を作り、お酒も飲めません。タバコも吸えません。あなたはそれができますか?」と、ぐさっと言いました。
「人間にとって、何か目標を持って、何かをやろうと思ったときに犠牲にするものもあるんです」と彼女が伝えると少年は真剣な顔をしてうなずきました。
そこに私達の役割があるんだな。常にそういう旅をしながら、そういう子たちからも刺激をもらい、そして、最初吉がびっくりさせるっていう発言をしましたが、「わ! 太鼓でこんなバカなことをやってる人たちがいるんだな」っていうことを感じてもらえる。
なので、私達の役割は創始者も言っていたことがあるんですが、「鬼太鼓座の太鼓は音楽ではない! 暴力である!」と。
それはどういうことかというと、聴く側と演じる側の間にあるんです。
舞台のプロセニアム(観客席と舞台を区切る額縁型の壁面)ですか、夢の世界と現実の間の壁をぶち壊す。「一発でぶち壊せ」。そういうことだと私達は思って演奏しています。
ですから、彼が言ったのは、それはぶち壊せたらいいな、ということだと補足しておきます。
以上です。
山崎 どうもありがとうございました。
森田さん、どうですか?
森田 私ですか。え……。鬼太鼓座さんみたいに、オリジナリティがあるものでは、民謡はなくて、昔からある形を崩してはいけないという、うちの師匠の教えもあるんですね実は。
なので、今回の出演に関しても、中村さんにはご迷惑というかいろんな壁がありまして……、でも本番当日は、私もやったことのないようなチャレンジができるんじゃないかと、私自身も今わくわくしている段階なので、私の中でも、ちょっと未知なんですけれども、先生が許してくれる範囲で、自分ができる範囲で、できることを相談して、チャレンジしてみたいなと思っている段階です。はい。
山崎 はい、ありがとうございました。
みなさんの決意を聞いて記者の方いかがでしょうか。
記者 草加市で世界的にも珍しい邦楽のコンサートをやるということですが、草加と邦楽のつながりはあるんですか?
山崎 私は横浜在住でして、草加まで2時間かけて通勤をしているんですよ。それで草加に通いはじめて、芭蕉が歩いた跡とか、さまざまな歴史を学んでいくにつれて、ここは洋楽よりも和のほうが似合うんではないかと直感を持ったんですよ。
綾瀬川が流れていたり、松並木が700本近く植わっていたりですね。
芭蕉が芭蕉庵から出発して日光街道に入るときに、草加を通過しただけなんですけれども、おくのほそ道ゆかりの町でもあるとか。それからせんべいはつとに有名である。というふうなさまざまなピースから総合的に判断すると、和のものがいいんではないかな、と。
私自身はNHK交響楽団に7年半、常務として在勤したわけですけれども、洋的なものに、私は演奏家ではないんですが、限界を感じてましたんで、できれば和的な、日本的なもので、今後継続してやれるものはないかと思いを持ったものですから、その場から中村さんに電話を入れて……。
それで決まるのは非常に早かったんですよ。中村さんも和のものをどこかでやりたい、と、やる限りは類型のないものをやろうじゃないかと。
単なる思いつきから始まったというところであります。
ゲスト3組による演奏
記者会見後半は演奏コーナーでした。
最初は森田彩さんの歌で、「山形県の花笠音頭」と「佐賀たんす長持唄」。
「花笠音頭」は陽気な歌声で会場が盛り上げりました。
「佐賀たんす長持唄」は中村明一さんからのリクエストで、コンクールで森田さんが歌って優勝した歌。ハイトーンボイスのどこか器楽的にも感じられる響きで、場が静まりました。日本一の民謡歌手の舞台に期待が高まりました。
次は中村明一さん。
演奏したのは「トランスフォーメーション」というオリジナル曲。ノイズや倍音が豊かな雑味豊富な音色の曲にもかかわらず、崇高さが漂っていました。
最後は鬼太鼓座。
松田惺山さんが美しい音色の尺八で五木の子守唄のモチーフで始め、そこに吉洋さんが締太鼓を絡めていきます。
松田さんが笛を龍笛に持ち替え、情念のこもった節を奏でると、吉洋さんは大きな太鼓を激しく叩くのでした。
リハーサルはおろか打ち合わせもなしの一発演奏だったそうです。
記者会見というより、講演つき演奏会のような贅沢な時間でした。