草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

RAYの「GREEN」。シューゲイザー特有の残響と倍音の音響空間について

RAYが先月CDアルバム「GREEN」を発表しました。RAYは女性4人のアイドルグループです。シューゲイザーの轟音サウンドを中心に、多彩なジャンルの音響に可憐な歌声を配置する独特な音楽世界です。

RAYの「GREEN」

RAYは2019年結成で、アルバムは「PINK」とこの「GREEN」のみ。傑作を出したこのタイミングで、7月に活動を休止することが発表されました。同時に新メンバー募集が行われており、新しい体制で9~10月を目処に再スタートするということです。

さてRAYのメンバーの一人、内山結愛(ゆうあ)さんは毎週名盤CDを聴いてブログでレビューする活動を続けています。

私がそのブログ発見したのは2年前で、PixiesAphex Twinはっぴいえんどマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ヴェルヴェットアンダーグラウンドポップ・グループなどが採り上げられていました。こんな名盤たちを吸収してしまったら内山結愛さんはいったいどんなアイドルに育ってしまうだろう、とわくわくします。最近はなんとジャコ・パストリアスマイルス・デイヴィスビル・エヴァンスジョン・コルトレーン……、とジャズにも広がっています。

note.com

シューゲイザーとはなんぞやとかいう話は2年前の記事を参照してください。

jitsuni.hatenablog.com

さてシューゲイザーの魅力はどこにあるのでしょうか。アルバム「GREEN」の3曲目「Gravity」を聴いてみましょう。

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歪(ひず)んだギターの音が積み重なり、残響と倍音の渦の中でRAYメンバーたちの可憐な歌声が漂っています。

ところで先日友人の家でたまたまデビッド・ボウイの「ヒーローズ」(1977年)を爆音で聴きました。サウンドプロデュースはブライアン・イーノです。ギターやシンセサイザーのフィードバックと持続音で空間が埋め尽くされ、頭が揺らされました。

ブライアン・イーノが実験的な録音によってあの音像を作り出したことがWikipediaで垣間見えます。

ヒーローズ (デヴィッド・ボウイの曲) - Wikipedia

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これはブライアン・イーノが作ってきたアンビエント・ミュージック(環境音楽)に通じると思いました。要するに空間をなんとかしたいんだな、と。そして僕はシューゲイザーとの類似性に気づきました。シューゲイザーの音響は空間的ですね。まるで大聖堂か洞窟のように広くて狭い、荘厳で親密な空間。

耳障りの悪いはずのディストーションのきいたギターからなぜそんな美しい音響が生まれるのでしょうか。たとえるならギターの音は薪(まき)であり、その薪が焚べられることによって立ち上がる炎のゆらめきがシューゲイザー特有の残響と倍音の音響空間と言えるのではないでしょうか。人は薪ではなく炎を見ます。つまり薪ではなくて炎がシューゲイザーサウンドなのです。