PEDROというバンドの「雪の街」という曲。美しく歪(ひず)んだギターの音に包まれて、アユニ・Dが歌う。
大声で泣けばいいと思っていたあの頃
こんなに大きくなったよ
かなしいもうれしいも全てを愛してくれた
私が抱きしめる番
PEDROはアユニ・D(ボーカル・ベース)、田渕ひさ子(ギター)、毛利匠太(ドラム)の3人組。
アユニ・DはBiSHのメンバー。PEDROではアユニ・Dが全曲作詞し、近年はほとんど作曲もしている。2018年に活動開始して2021年12月に活動休止した。
「雪の街」はアユニ・Dの出身地である北海道の風景と故郷の人々への思いが込められている。
『SHAPE OF LOVE』と第されたBiSHの映画がある。2018年のライブツアーを追ったドキュメンタリーだ。
冬の札幌でのライブの様子も収められており、アユニは雪で凍てついた歩道を軽快に走り抜け、スタッフが驚いた。
その日のライブで、アユニは客席にいる親の顔を発見して驚き、歌詞が飛んだ。そして泣いた。公演後、楽屋で号泣した。
凍てついた道をあんなに走れるのは、人に会いたくないからいつも登下校をぎりぎりの時間にして走っていたからなんだって、というスタッフの声が入る。
故郷については複雑な感情があった。
しかし今は「私が抱きしめる番」と歌える。
アユニは成長したのだ。
BiSHが2023年に解散するという発表があった。その決定は2019年11月になされていたと知って驚いた。最高のときに解散するのだという。
最近のBiSHの活動を見直してみると、あらゆる楽曲やライブの場面の背後には解散があったのかと、新たな意味が加わる。
解散を決めたあとにコロナ禍が襲い、ライブ活動が止まった。このままでは最高を迎えないまま解散がやってきてしまう。
だから昨年(2020年)12月に、約1年ぶりに開くことができた有観客ワンマンライブ「REBOOT BiSH」でのメンバーの涙には計り知れない思いがあったのだろうと、今あらためて考えてしまう。
BiSHのメンバーは皆様々なジャンルで成長しているし、ここから1、2年でさらに飛躍する。解散後が楽しみだ。
と思っておこう。思うしかない……。