草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

日本の響。世界の打楽器が一斉に鳴り響いてぐいぐい押し寄せてくる

 9月8日(土)。草加市文化会館ホールで「日本の響 草加の陣」の第3弾が開催されました。7組出演して5時間近い長丁場で、しかも出演者がみんなインパクトがありすぎて、少々疲れましたが充実した時間でした。それでは感想など書いていきましょう。当日のアンケートが簡単には書けなかったので。

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鬼太鼓座(おんでこざ)

 鬼太鼓座(おんでこざ)は、1971年に佐渡で田耕(でんたがやす)氏によって創設された和太鼓集団です。和太鼓と言えば思い浮かべる、複数の各種太鼓による舞台演奏の「組太鼓」というスタイルが広まったのは、鬼太鼓座の活躍によるところが大きいと言われます。

 トレーニングと練習を繰り返す合宿生活と、全国、全世界への演奏旅行の日々で、技と肉体と感性は極限まで磨かれ、繰り出される演奏は、芸術であり、曲芸でもある。

 機械のように正確な律動。速く強く打ちつづけている間はほとんど無表情で、限界に近づくとちょっと苦痛の表情が垣間見える。武道に近い。空手の型の演舞とか。

 曲芸という面をフィーチャーした演目がありました。けん玉です。とにかくけん玉がうまくて、高速「もしかめ」が繰り出す軽快な音は、タップダンスのように聞こえました。

 あと、筋肉がすごくて進撃の巨人を連想しました。

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※ ↑ 鬼太鼓座のけん玉。3分あたりから超絶!

民謡クルセイダーズ

 民謡クルセイダーズはギタリストの田中克海さんと民謡歌手のフレディ塚本さんが中心となって結成されたグループ。

 編成は、キーボード、ギター、ティンバレス、ボンゴ、コンガ、ベース、トランペット、サックス、ピアニカ、そしてボーカルの総勢10人です。

 ボーカルのフレディ塚本さん以外は、みんないろいろな帽子をかぶっていて、リゾート気分

 ラテン、レゲエ、アフリカンなどのリズムに、ダブに通じる響きが強めの、それでいてちょっとチープなサウンドで、「串本節(和歌山県)「おてもやん熊本県)」「会津磐梯山福島県)」「炭坑節(福岡県)」が高らかに歌われます。

 途中でキーボードが誤作動していきなり関係ないリズムがスタートしてしまい、やり直した場面もありました。

「古い楽器を使っているもので」と弁解していて、なるほど1980年代のクラブサウンドに相当なこだわりがあって楽器も本物を使っているみたいです。

 民謡クルセイダーズで盆踊りをやったら、民謡振り付けとラテン振り付けが混ざって楽しそうですね。

 司会のピーター・バラカンさんが、「民謡もラテンもダンスミュージック」って言ってたし。

澤田勝秋

 澤田勝秋さんは津軽三味線の名手。右手の撥捌きはもちろん、左手の指ではじく音も明瞭で、小気味いいリズムを打ち出していました。

 歌声も素晴らしかったのです。司会の「邦楽ジャーナル」編集長、田中隆文さんによると、津軽三味線と歌を同時に演る人は稀なことだそうです。

 昨年の日本の響に出演した二代目高橋竹山さんも歌と津軽三味線を同時に極めた人ですが、彼女は「歌があってこその三味線」と言っていました。

 さて澤田さんは演奏しているときは邦楽界の重鎮という風情でしたが、喋りだすと印象がだいぶかわりました。

「東京出てきて50年、だいぶ垢抜けた」と、津軽のきつい方言のまま言い、50年たっても垢抜けてないことを証明しました(笑)。

 司会のピーター・バラカンさんは、澤田さんのおしゃべりは半分しか理解できなかったと笑っていました。

 弦楽器と歌をやる人ということで、ピーター・バラカンさんはエリック・クラプトンを引き合いに出して、「澤田さんは日本のブルースギタリスト」と言いました。澤田さんにはその喩えは通じなかったようでした。

森田彩

 森田彩さんは草加市出身で草加市在住の民謡歌手です。一昨年は「日本民謡協会内閣総理大臣杯争奪戦」で優勝、昨年の「日本民謡フェスティバル2017」ではグランプリを受賞した若手のホープです。

 森田さんは、まずこのコンサートのプロデューサーである中村明一さんの尺八といっしょに歌いました。

 声の高さに衝撃を受けました。声自体に力がある。そしてビブラートのコントロールの精妙さに感心しました。つまり歌の技術が高い。

 次の曲では伴奏が津軽三味線の澤田勝秋さんに変わりました。

 澤田先生は森田さんとはかなり親しいようで、冗談を言い合っていました。そのやりとりを見ても、つくづく澤田先生って面白くて心優しい方だなと思いました。

 3曲目に、次に登場する中村明一FORESTから、中村明一さんと琴奏者とキーボード奏者が伴奏につきました。「中国地方の子守唄」では、コード感があいまいなアンビエントな響きで、悲しみの強い子守唄の側面が強調されたと思いました。

 さらにFORESTのメンバーがフルに入ると、すごくかっこよくなって、民謡とジャズ・プログレの融合の姿を見せつけられました。

 民謡クルセイダーズが、民謡の歌は民謡のままで、バックのラテン・クラブミュージックも勝手に演奏して両者が融合し切きらない、「マッシュアップ」的で今っぽい面白さだったのとは対照的でした。

中村明一/FOREST

 このコンサートのプロデューサーで尺八奏者である中村明一さんが率いるのがFOREST。メンバーは「手数王」と呼ばれるドラマーの菅沼孝三さん、ギターの道下和彦さん、キーボードの半田彬倫さん、ベースのデレック・ショートさん、二十五絃箏の内藤美和さん。

 激しい変拍子と曲調の変化で、全体像がつかみにくい曲。もう一度聴き直したいです。

 そんな中、森田彩さんがゲストで参加した曲が2曲あって、それが美しかったです。

 1曲は今日のコンサートに出演を予定していたのに惜しくも亡くなった杵屋裕光さんに捧げる曲でした。箏の内藤美和さんは歌もできる方で、森田さんの主旋律にテンションの効いたハーモニーをつけて、幽玄の世界が浮かび上がっていました。

 もう1曲は都はるみさんに歌っていただくイメージで作った曲とのことでした。昔流行った「ドドンパ」のリズムを連想するノリのいい曲でした。ノリはいいけどやはり複雑でした。手拍子や足踏みが入る場面があったけど、真似できない。

ネーネーズ

 ネーネーズは1990年に結成された沖縄民謡をベースにした「オキナワンポップス」の女性ヴォーカルグループです。

 メンバーチェンジを繰り返して、現在は沖山美鈴さん、上原渚さん、本村理恵さんの3人組となっています。

 伴奏は洗練されたサウンドのカラオケと、メンバーが弾く蛇味線と太鼓でした。

 衣装は一人ずつ赤、黄色、青を基調とした着物。

 メンバーチェンジ、色担当、カラオケ、とくると、現代のアイドルグループとも共通しているかな、と思いました。

 ネーネーズ那覇市国際通りにある島唄という居酒屋で週に5日ライブをやっているそうです。そう! 今会えるアイドルです!

 ネーネーズの魅力は、3人の声のユニゾンの豊さですね。コブシのシンクロも素晴らしいです。

 曲目は沖縄民謡のほかにBIGINの島袋優さんが作った新曲「若夏ジントーヨー」や、ボブ・マーリーの「ノーウーマンノークライ」も歌いました。

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 そして代表曲「黄金の花」。歌詞が心に沁みました。

「あなたの生まれたその国に どんな花が咲きますか 神が与えた宝物 それはお金じゃないはずよ」

仙波清彦カルガモーズ

 カルガモーズは、邦楽囃子仙波流家元である仙波清彦さんが率いる25人のビッグバンド。

 その楽器編成は……、

 (つづみ)6人、ジャンベ(アフリカの打楽器)3人、ティンバレス(ラテンパーカション)4人、ドラム2人!

 あと、コンガ(ラテン)、タブラ(インドの打楽器)、キーボード、トランペット、バイオリン。

 仙波さんはケンガリ(韓国の金属の打楽器、小型のドラ)を叩いたり、指揮というか指示したり、ドラムやったり、細長いニワトリのおもちゃで握ると変な声で鳴くやつを鳴らしたり。

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 つまり日本とラテン、アフリカ、インド、欧米、韓国その他の打楽器が一斉に鳴り響く新しい世界。それがすごい迫力でぐいぐい押し寄せてくる。

 ポリリズム(4拍子と3拍子などが同時にあるようなリズム)のリズムチェンジでは目眩がしたり、サンバでよくあるような決めのパターンを全員でしつこく打ち続けるところでは胸が高鳴ったりしました。

 全体的にとても自由なお祭り騒ぎ。鬼太鼓座のストイックさとは正反対で、このコンサートの幅の広さを感じました。

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※「オレカマ」は「俺に構わず行け」という意味だとか。

 フィナーレは出演者たちが再登場して「ソーラン節」。手数王菅沼孝三さんはタンバリンを担当しました。

 

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