草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

草加出身のミュージシャン立川俊之さんはデビュー25年の今が全盛期ではないでしょうか

 6月3日(金)、草加市のアコスホールで開催された「大事MANブラザーズ 立川俊之ライブ」に行ってきました。

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 草加市出身の立川俊之さんが草加で開いた凱旋コンサートです。ロビーにたくさん飾られた花束の中には中学の同級生という森尾由美さんから届けられた花束もありました。

 立川さん、トークが面白くてしかも長くて……(笑)。

 たとえば、ベースの若者(実は34歳)が大阪府八尾(やお)市出身で、八尾はどうもぱっとしない街という点で、草加と共通するところがあるというのです。どちらも「来夢来人(ライムライト)」という名前の喫茶店がありそうな街だというのですが、どんな比喩だ。

「そんなぱっとしなくて台無しな街を、「ダイナシティ」といいます」と立川さん。なるほど! と心にメモしました。

 あと、女性コーラスが2人いたんですが、そのうちの1人を「昭和臭」がするって立川さんが決めつけるんですね。遠くから見ると長身の美人で、どこが昭和臭なのかわからないんですが。

 で、彼女はスナックのママが似合う、店の名前は「スナック雫(しずく)」がいい、この際名前も「しずく」に改名しろって、強引に話を進め、「スナックの場所は錦糸町がいいか。いや最近あっちのほうがスカイツリー効果で垢抜けてきたから、上野がいい。上野もだめだ。竹ノ塚がいい」という展開に。

 「竹ノ塚」という、草加市民にお馴染みの、草加に隣接する足立区の街の名前が出てきてお客さんは大受け。

 さらに立川さんは竹ノ塚論を展開します。

「竹ノ塚ってのは、足立区のやさぐれ感が草加に流れ込まないように全力で堰き止めている街なんですよ」

 草加市民たちはみんな「うんうん」と納得です。バンドメンバーは首をかしげていました。

 コーラスの「しずく」さんは、竹ノ塚に店を出したら、みんな来てね、と明るく言ってました。

 立川さんや大事MANブラザーズバンドについては、大ヒットした「それが大事」ぐらいしか知らなくて、当時僕はまだ草加市民じゃなかったこともあって、あまり関心を向けていませんでした。それどころか、一発屋の1人という認識でした。もっとも一発屋という評判についてはご自身もテレビ出演で自虐的に認めていたようです。

 でもデビューから25年間、プロとして音楽をやってきた歳月はダテではなかったことが、バンドの音からわかりました。

 ドラム、ベース、キーボード、サックス、コーラス(2人)、ギター、そしてボーカルとギターの立川さん。合計8人の編成。手練のバンドマンたちの集まりでした。

 メンバー紹介によると、長い人は20年とか15年とか、バンドメンバーとしていっしょに音楽を作ってツアーしてきた仲間なのだそうです。

 だから、音楽については阿吽(あうん)の呼吸です。

 立川さんが懐かしいドラマ「傷だらけの天使」や「太陽にほえろ!」のフレーズをギターで奏でると、もう一人のギタリストやキーボーディストが合わせて来て、サックス奏者がむせび泣くメロディーを吹き上げます。いいねえ!

 また昔、森高千里の「渡良瀬橋」に刺激されて、松原団地の昔の風景を歌いこんだ「いちょう通り」という曲を作ったんだけど、Bメロをすっかり忘れてしまった、と言いだします。

 そして「今ここで作ります」と宣言して、ギターをかき鳴らしながら数分打ち合わせして、見事に披露して見せました。いつか完成させてネット配信するそうです。草加の新しいご当地ソングですよ!

 草加市立栄中学校の校歌をジャズっぽく歌います、という突然のコーナーもありました。立川さんが複雑な代理コードでジャジーなフェイクを取り混ぜて気だるく歌い出すと、サックスが粋なアドリブソロを入れてきたりしました。元の校歌を知らなかったのが残念。

 音楽が大好きな仲間と楽しく楽器で会話しながら25年間を過ごしてきたのでしょう。立川さん、ギターめちゃくちゃうまいし。

 8人編成のバンドが織りなすサウンドは、16ビートが中心のAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)と言えるのでしょうか。最近はあまりAORという用語は使われないかな。ゴリゴリのロックというよりも、洗練されたコード進行やアレンジの曲を、スピード感のある演奏で惹きつけるような感じ。だからというわけかどうか、ドラムの左手のスネアの打撃が力任せではない、という印象でした。

 その最先端に山下達郎がいるような世界って言うのかな。ちなみに山下達郎バンドにもコーラスとサックスは不可欠ですね。

 そんなサウンドに乗せて、美声というよりはアクの強い、25年歌い続けてきて鍛えられた歌声によって、25年やってきたから自然と説得力を持ってしまう言葉(って立川さん自身が言ってた)が心にびんびん響きます。

 若い時は垢抜けないように見えた顔は、50歳になったら味のある不良オヤジになって魅力的です。立川俊之さんは今こそ全盛期ではないでしょうか。

立川俊之オフィシャルウェブサイト