2016年1月30日(土)と31日(日)の2日間、草加市文化会館で第11回草加ミュージック・フェスティバルが開催されました。1日目の30日(土)は「第2回総選挙」。アマチュア・バンド5組が出演し、観客が人気投票をしました。
2日目の31日(日)がメインイベントです。僕は2日目だけ行きました。まずは午前11時から、草加市文化会館コミュニティ棟1Fで5組のパフォーマンスが披露されました。
草加ミュージック・フェスティバルのパンフレットの表紙には草加市歌の歌詞が書かれている。フィナーレでは出演者と観客たちが歌った。
ブライトピンクの月はエルビン・ジョーンズとアルバート・アイラーか
トップが「ブライトピンクの月」というユニットなのですが、これがものすごくユニークでした。女性ボーカリストと男性ドラマーだけのバンドなんです。ボーカリストは芸歴30年、ドラマーは40年の超ベテランで、このバンドは結成3年だそうです。
バックがドラムだけという場合、そのほかの楽器がカラオケで鳴っているというやりかたなら例があるかもしれませんが、このバンドはドラムの生音しかありません。その前で女性ボーカリストが自由に高らかに歌うんです。
ビートルズやザ・ピーナッツなどのカバーも歌います。でもオリジナル曲の伸びやかさ、スケールの大きさがすごいです。
そのドラマーの演奏が圧巻なのでした。
たまたま先日聞いたミュージシャン山下達郎のラジオ番組で、リスナーから「歌いやすいドラマーの条件は?」と問われ、山下氏は「正確なリズムのキープとおいしいオカズ(フィルイン)」と答える場面がありました。
オカズとは、歌のフレーズの切れ目にアドリブで装飾的なフレーズを入れること。
ブライトピンクの月のドラマーは「オカズ? 何それ」と言いそうです。なにしろ彼は歌のフレーズとかぶって派手に叩きまくります。そもそもキープすべきリズムパターンがないのではないか。もしかしたらこのドラマーは、ドラムで歌っているのではないでしょうか。そして歌にドラムでハモリをかぶせているのではないかと。
そして手数の多さにも驚きます。ジャズドラマー、エルビン・ジョーンズを連想しました。ジョン・コルトレーンと数多くの共演をしてきたポリリズムの天才ドラマーです。
そしてこのユニットの女性ボーカリストはというと、小柄ながらパンチの聞いた歌声で叫ぶように歌う姿に、歌の原初の力を感じました。サックス奏者アルバート・アイラーの魂剥き出しの音色が思い出されました。
言うなればエルビン・ジョーンズのドラムでアルバート・アイラーがテナー・サックスを吹いている。
※Youtubeにあったブライトピンクの月のライブの模様はこれ ↓
歌とドラム:ブライトピンクの月 曲目:ブライトピンクの月
デ・ラ・ルスの演奏に立ち上がった観客がどんどん前方に押しかけて踊りだした
文化会館ホールでのメインイベントは「NORA Special Latin Unit」の公演でした。
NORAさんは、サルサバンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスのメインボーカリストです。
サルサとはプエルトリコ系その他ラテン諸国のダンス音楽がニューヨークで融合しながら発展し、1960年から70年代にかけて世界中で大流行した音楽ジャンルです。
オルケスタ・デ・ラ・ルスは日本人のサルサバンド。1990年にアルバム「DE LA LUZ」を発売したところ、なんと米国ビルボード誌ラテンチャートで11週連続1位を記録したのです。
そのNORAさんがなにやらバンドメンバーを率いて草加に来たわけですが、なんとこのバンドは「オルケスタ・デ・ラ・ルスです!」ということでした。フルの人数だとパーカッションやホーンがもっと多いのですが、今回はトロンボーン、トランペット、ドラム、コンガ、ベース、ピアノの6人でしたが、紛うことなき本物のオルケスタ・デ・ラ・ルス、世界的サルサバンドを草加で生で見てしまったのでした!
「オルケスタ・デ・ラ・ルス見たことある人!」という呼びかけに前方のかなりの人が手を挙げていました。ファンはチャンスを逃すことなく草加まで追いかけてきたんですね。
ラテンの名曲やオリジナル曲に交えて、サザンオールスターズ原由子の「私はピアノ」やAIの「STORY」のサルサバージョンなどで、NORAさんは圧巻の歌声を響き渡らせてくれました。
※ちなみに「サザンオールスターズ」というバンド名はかつてのサルサのスーパーバンド「ファニア・オールスターズ」から取ったというのは豆知識です。
※Youtubeで見つけた「私はピアノ」ラテンバージョン ↓
I am a piano / Orquesta de la Luz
サルサのリズムはすごく複雑です。ベースのシンコペーションのズレ感がぐっと来て、気分が高揚します。
会場はどんどん盛り上がり、NORAさんは「草加をラテン化して帰って行きたい!」と宣言しました。
最後の曲では前方の観客が立ち上がって踊りはじめました。
「ケセラセラ」のコール・アンド・レスポンス。NORAさんと観客の掛け合い。途中から「ソーカ・ソーカ」のコール・アンド・レスポンスになったのでした。
立ち上がった観客がどんどん前方に押しかけて、踊ったり手拍子をしたりNORAさんの手の振りを真似たりしました。そしてついにはNORAさんが観客をステージに上げてしまいました。十数人の男女、大人と子供たちがステージで笑顔で踊りました。
このとき草加はラテン化したのでした。
ちなみに、広い意味でラテンと言えるのではないかと思われる音楽ジャンルに「SOCA(ソカ)」というものがあります。ソウルとカリプソを足して「SOCA」となりました。1980年代にカリブ海を中心に大流行したそうです。
そんなSOCAの曲のひとつ、Charles D Lewisの「Soca City」という曲では「ソーカシティ♪」という素敵な歌声が何度も聞くことができます。
草加ラテン化計画において、この曲は放っておくわけにはいかないかもしれませんね。