飛び出すモンスター 誰よりも早く
もう一度だけみせてみてよ
嗚呼、忘れそう! 忘れそう! 忘れそう!(ワッセッソ!ワッセッソ!ワッセッソ!)モンスターーーーーーー!
BiSH「Monsters(モンスター)」(2015年)
作詞:ユカコデラックス 作曲:松隈ケンタ
夢に見たモンスターよ。かつて見たモンスターよ。現れ出でよ!
モンスターをライブに召喚する歌と舞い。「ワッセッソ」は召喚の呪文か。
モンスターはBiSHと清掃員の間に立ち現れるエネルギー体のようなものだろうか。
ライブの序盤にこの曲が歌われると、そこからライブは興奮、歓喜、忘我に包まれ、モンスターが高温で燃焼して光り輝く。
最近石塚真一のジャズ漫画『BLUE GIANT』シリーズを一気に読み返したところだ。現在3部合計28巻刊行済みで連載中。宮本大(だい)という若者がテナーサックスの修行と旅を重ねて世界一のジャズプレイヤーを目指す物語。
大の演奏は、音が異常にデカくて、速くて、長い。
演奏のクライマックスでは見開きの中央で上体を反らしたり前かがみになったりして集中する。大の体は燃えているような光を放ち、演奏が終わると膝から崩れ落ちる。宮本大はモンスターだ。
※ブルージャイアントという言葉は天文学用語。青色巨星。高音で青く燃える恒星。
BiSHのMonsters(モンスター)という曲は、BPMは150だが、ツービート、裏打ちとツーバスで実質は倍のBPM300の高速ヘビーメタル(的なロック)だ。吠えるような力強い歌声ながら、メロディーと歌詞は妙に切ない。モンスターに会いたいと哀願する。だが、この歌ではモンスターは姿を見せないままだ。
「もう一度だけみせてみてよ」
「嗚呼、忘れそう! 忘れそう! 忘れそう!」
もう時間がない。モンスターよ現われて! このままだと忘れてしまう! 忘れたくない!
僕たちは忘れっぽい。BiSHが去ったあとで、BiSHのライブで体験したモンスターを、BiSHというモンスターを忘れてしまうのだろうか。
いや僕たちはモンスターを忘れない。
「忘れない! 忘れない! 忘れない!!!!!!」