草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

少女よ靴を睨め。

ある日、内山結愛(ゆうあ)というアイドルが書くブログ(note)がレコメンドされた。音楽について綴るブログだ。

note.com

そのブログで彼女はThis Heatという古いバンドを紹介していた! アイドルがなぜThis Heatを知っているんだ!

彼女はこう書き出した。

久しぶり来ました。ヤバイアルバム。

断末魔や悲鳴、民族感ある曲、爽やかロックな曲、なんでもアリ!あらゆる要素が大渋滞してます。

変態的だけど、しっかり格好良い音楽が40分に凝縮されている一枚です。

是非読んでみて聴いてみて下さい!

 そして彼女は1曲ずつ耳に響いたものを描写し、感想を綴っていた。This Heatをとてもポジティブに楽しんでいる。

This Heat の『Deceit』を聴いてみた編|内山 結愛|note

彼女が他に紹介しているもの。Pixies の『Surfer Rosa』、Weezer の『Weezer』、Aphex Twinの『Richard D. James Album』、はっぴいえんど の『風街ろまん』……。もっと過去にはスティーヴ・ライヒマイ・ブラッディ・ヴァレンタインヴェルヴェットアンダーグラウンドポップ・グループも。名盤の数々!すごい!うれしい!

でもどうせプロデューサーだかご意見番だかの音楽マニアのおじさんが押し付けているんだろう、と思った。それでもいいし。

ところが、そうでもないことがわかった。彼女は自分で中古レコード店に行って買っていた。いろんな人のアドバイスもあるだろうが、自分で買っておくべき名盤を吟味し判断して選んでいるのだった。

そうなるとこの女性が所属するアイドルグループが気になる。RAYというグループだった。そしてYoutubeで見た楽曲にショックを受けた。

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これはシューゲイザーだ! フィードバックが効いて伸びるギターが幾重にも重なり、轟音が荘厳に輝く。その凶暴で絢爛なサウンドに包まれるように可憐な女性ボーカルが聞こえてくる。

RAYは去年の5月にデビューした4人組のグループ。シューゲイザーにこだわる音作りをしている。

さらに調べたら、RAYの運営には「・・・・・・・・・」という去年解散したユニットを運営していたチームが関わっていることがわかった。「・・・・・・・・・」は発音は決まっていないが「ドッツ」読まれることが多いらしい。メンバー名も不明で顔も目隠しされていて、運営コンセントが哲学的で、これは売れない。でも楽曲が最高のシューゲイザー

この・・・・・・・・・のメンバーの一人が冒頭に紹介した現在RAYに所属する内山結愛なのだった。彼女は・・・・・・・・・の活動を通して、シューゲイザーを自分の血肉にフィードバックして培っていたのだった。

Youtubeは僕に別のアイドルグループもレコメンドした。「ヤなことそっとミュート」という名前で曲は「Afterglow」。

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素晴らしいシューゲイザーだった。白い服を着ているところはRAYとも共通する。荘厳サウンドには無垢な衣装。ヤなことそっとミュートは名前は知っていたが、シューゲイザーオルタナティブ・ロックを追求してきたグループだとこのとき知った。

シューゲイザーとは1990年代に起こった。ロックのジャンル、様式、運動。語源はShoe(靴)のgazer(見つめる人)。床に置いた歌詞カードか、複雑にセッティングされた足元のギターエフェクターをずっと見ているからそう言われたいう説がある。あるいは観客へのアピールよりも、自分の音に集中したいから下を向いて演奏している、そんな内省的な姿勢の現れかもしれない。

代表的なバンドはマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。ギターで空間が埋め尽くされたサウンドとときどきグイッとずれるキモいピッチ感、そしてか細い歌声が特徴。耽美的な世界を描き出したのコクトー・ツインズも挙げられている。

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実際のところリアルタイムでそれらのCDを聴いていた当時、シューゲイザーという言葉は聞いた記憶がなかった。後年知って調べたら、wikipediaで膨大なバンドが数え上げられていた(82組)。

アイドルの楽曲ジャンルは多様になってきている。現代音楽(ミニマルミュージック)で歌うMaison book girl、ファンクやR&Bで歌うフィロソフィーのダンス、EDMのSTEREO JAPAN(解散したけど)など、ジャンルにこそ主張がある。

シューゲイザーの美学はアイドルの儚さにこそふさわしい。

アイドルよ靴を睨め。