草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

北原ミレイは「ざんげの値打ちもない」のイメージを払拭する楽しいエンターテイメントだった。

2月23日(土)と24日(日)の2日間、草加市文化会館ホールで第14回 草加ミュージックフェスティバルが開催された。

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第14回 草加ミュージックフェスティバル、パンフレット。縦書きの文字は草加市歌「想い出はいつも」の歌詞。

2月23日(土)

途中から入ったら、サイガーが演っていた。サイガースは草加でおなじみの百戦錬磨のパブロックバンド。久しぶりに見たら女性ボーカルがいた!

oasisの「Don't Look Back In Anger」は今までの泥臭さが持ち味のサイガースには珍しい選曲だけど、女性ボーカルの迫力ある歌声が活かされていると思った。サイガースのこれからの方向がとても興味深くなった。

イーグルスの「DESPERADO」を演ったら、隣の客が「かぶった」とつぶやいたので、見るとケセランパサランの2人だった。

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THE生きてるズは青春パンクと言えそうな、青臭くて熱い演奏だった。

ギター・ボーカルとドラムとベースともうひとりのギターの編成。

でもって、ベーシスト。すごく激しく動く。UNISON SQUARE GARDENか、ってくらい。

で意外だったのが、パンクのベースにしては(と言っては失礼ですが)すごいテクニシャンだったこと。指弾きもスラップも、と多彩な奏法で楽曲をドライブさせていた。

参考動画:THE生きてるズ Halloween LIVE

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ケセランパサラン山口愛さん(ボーカル/カズー)と片野浩道さん(ギター/コーラス)の2人組ユニット。サイガースとかぶった「DESPERADO」は、自ら日本語の歌詞をつけた「日本語で唄おう」バージョンを歌った。これは原曲とはちがって、いや原曲に潜んでいた可能性を拡大して、愛情が満ちた歌になっている。日本語だからなおさら。

参考動画:DESPERADO / The Eagles (cover) / Let's sing a song in JAPANESE / Keseran Pasaran.

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代表曲「ひびけ」も歌ってくれた。前から思っていたが、「ひびけ」は「ひ~」「び~」「け~」を拍のあたまに置いて歌うところと、拍の手前から歌う、いわゆるアウフタクトのところがある。

アウフタクトの「ひ~び~け~」「と~ど~け~」は、伝えたいことがあふれて気持ちが急いでいる感じが伝わってくる。

ちょっと話がずれるが、ケセランパサランの「ラストダンス」のルーツ・ロックっぽい魅力について知ってもらいたくてうずうずしている。

というのは、ザ・バンドのラストライブをマーチン・スコセッシが監督した映画『ラスト・ワルツ』の、エンディングで流れるラスト・ワルツのテーマを連想してしまうからだ。

ケセランパサランご本人は意識していないと言っていたが、最近YouTubeで公開した「ラストダンス」の、黒い背景でバンドメンバーが割と狭く集まって演奏する様子が、「ラスト・ワルツ」の映像となんだか似ているような気がする。

ちなみにケセランパサランの「ケセパサゆかりの音楽会」というアルバムも、エンディングは「ラストダンス」のインストゥルメンタルバージョンだ。

参考動画:ラストダンス / ケセランパサラン (Last Dance / Keseran Pasaran.)

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参考動画:The Band - The Last Waltz Credits/Outro

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ワッシー・ヴィンセント・ジュニアとルーツバンドは、ビアノ、ヴァイオリン、ギター、ドラム、パーカッション、ベース、コーラス2人、そして三味線とドラムのワッシーという編成。みんな高度なテクニックを有していて、個性が強い。

ピアノがフリー・ジャズみたいになるところや、ヴァイオリンとベースがユニゾンになるところなどゾクッとくるところがいっぱい。

高度なポリリズムを細かく聴くと混乱するが、おおらかに聴くと最高にノリノリ。

小さな子供が客席後方から走ってきて、ステージ手前で派手に踊りだした。

お父さんらしき男性が追いかけて、連れ戻すのかと思ったら、いっしょに踊りだした。
子供の動作は、ときどきコーラスの女性の振り付けと一致するので、相当なファンだろう。

そのうち、もうひとりの男性も踊りだした。

ダンサーたちの姿は光が当たらずシルエットになっていて、ちょっと美しい。ワッシーバンドの音楽の楽しさを視覚的に伝える助けになっていたと思う。

2月24日(日)

colorsugar (カラーシュガー)はボーカル&ギターの柄須賀幸恵(からすがさちえ)さんと、ベース&コーラスの雄太郎さんの男女ユニットだ。草加市在住で、市内のあちこちでよく歌っている。

柄須賀さんのウィスパーボイスはボサノバやジャズが似合う。

僕はそっと」というすごい曲がある。

メロディの動きが美しくて、エバーグリーンの風格。大物歌手がカバーすべき。小野リサ竹内まりやがいいな。

草加市公認ミュージシャンというものがあるならなりたい」と言っていた。公認してほしい!

参考動画:僕はそっと/柄須賀幸恵(PV)

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神保ジャズオーケストラはピアノ、キーボード、ギター、ベース、ドラム、サックス(テナー2本、アルト2本、バリトン)、トロンボーン4本、トランペット4本の18人編成。かっこいいジャズを演奏した。

この神保ジャズオーケストラが登場してからが、草加ミュージックフェスティバルの醍醐味だ。

自らが主役の素晴らしい演奏を披露してからは伴奏に徹して、昔のテレビで見たことあるような歌謡ショーが展開する。

いろんなジャンルの演奏も器用にこなせる神保ジャズオーケストラが、実はいちばんかっこよかったかもしれない。

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さあジャズシンガー池田なみさんの登場だ。

ジャズオーケストラをバックに「アメイジング・グレース」を歌った。ちょっとハスキーな魂のこもった歌声だ。毎年ニューオーリンズに修行に行っているそうだ。

「成長中です。ここも修行の場です」と語った。

1曲で終わる予定だったが、感動したお客さんたちから予定外のアンコールの声が起こった。さあ何をやる? 何ができる?

リーダーの神保さんは池田さんとちょっと話をして、オーケストラに「オール・オブ・ミー、Fで!」と声をかけ、ソロをとる人を何人か指名した。

「急にやるときはたいていオール・オブ・ミーなのよ」と池田さんが言った。

オール・オブ・ミーは予定外だったとは思えないようなアンサンブルで、池田さんの歌もゴキゲンだった。

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続いて演歌歌手の橘和希さん。うまい! そして、演歌の伴奏に変化したジャズオーケストラもうまい!

最新シングル「母の背中で聴いた歌」は、母といっしょに歌った童謡を思い出すというストーリーで、途中で「月の砂漠」が引用されるところで、ぐっとくる。

橘さんは谷塚駅近くの居酒屋「なごみ処 Ari」も営んでいる。以前飲みに行ったとき、歌ってくださいとお願いしたら歌ってくれた。至近距離の絶唱に震えた。

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最後は北原ミレイさん。神保ジャズオーケストラはそのまま。

北原さんはラメ入りの白いドレス。スリットから太ももが見える! スタイルがいいが、デビューして49年というのが驚き!

ファンが大勢入っていて、「ファンが同年代ばっかりでうれしい」と北原さん。

デビュー曲にして最大のヒット曲「ざんげの値打ちもない」は2曲目であっさり披露してしまった。

ステージから降りて客席の通路を歌いながら歩く場面があった。観客と握手しながら歩くその姿からはスターのオーラが発せられていた!

ワッショイ」という最近の曲の編曲猪股義周さんは草加市在住とか。客席にご本人がいた。ジャズオーケストラが映えるアレンジ。

客席ではファンが立ち上がって踊りまくった。

すごく楽しいオンステージだった。

最初のほうで誰でも知ってる問題作「ざんげの値打ちもない」をやってしまってから、その暗さを払拭するかのように楽しいエンターテインメントをがんがん展開した。

暗い歌は北原さんの本領ではなかったのかもしれない。あのイメージはすっかり吹き飛んだ。

和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」も歌った。力強さは圧巻だった。新曲の「愛は一期一会」は総決算とも言える壮大なラブソングだ。 

歌とトークで完全に楽しませるステージは円熟の歌謡ショー。また人生をさらけ出して笑いと涙に変えるスタイルはシャンソンにも通じるかもしれない。

 参考動画:北原ミレイ「愛は一期一会」

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もちろん1970年に北原ミレイさんによって歌われた「ざんげの値打ちもない」が日本歌謡史に輝く名曲であることは間違いない。また北原さん自身もこの歌を大切にしていると語っている。

女の悲劇の半生を簡潔な言葉の繰り返しで歌い切るこの曲の凄みを、山崎ハコのバージョンでご紹介します。

参考動画:山崎ハコ ざんげの値打ちもない フルカバー

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