草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

神輿には個人を超えた何か大きな力がある

 先日、草加駅東側の旧日光街道八幡神社例大祭がありました。お神輿が出ました。
 草加のお神輿は独特でして、そこでいろいろ調べたことがあって、以前あった「草生人メルマガ」に書いたことがありました。

 2013年7月16日に書いたその記事を再録しようと思います。読み返したらリンク切れがあったりしたので、本文も合わせて修正し再編集しました。 

草加の神輿の作法

 夏の祭りシーズンだ。2013年7月13日(土)と14日(日)は草加駅の東側の旧道で八幡神社例大祭が行われた。

 知り合いの高校生が祭りのはっぴを着ているのに出会った。これから初めてお神輿を担ぐのだと笑っている。子供神輿ではない。本物の大人の神輿だという。だがひょろっと背が伸びてしまって筋肉が追いついていない彼の立ち姿を見ると、これはお神輿の重量に耐えられそうにないな、と判断せざるをえない。

「今回は様子を見るだけにしておきな。草加のお神輿がどんな動きをするかよく観察して規則を把握して、危険を避けられるようになってから担いだほうがいいよ」
と忠告した。

 草加の神輿には草加独自の作法がある。その作法は草加もみ」と呼ばれ、独特の掛け声に合わせて神輿が動く。

 まず「わっしょい!」「わっしょい!」「わっしょい!」「わっしょい!」(9月の神明宮の祭礼では「ながせ、ながせ」)というコールアンドレスポンスのときは神輿はまっすぐ進む。

「まわれ!」「まわれ!」「まわれ!」「まわれ!」

 このときは時計回りに方向転換。

「やんわれ!」「やんわれ!」「やんわれ!」「やんわれ!」

 神輿がぐらんぐらんと振り子のように左右に揺れる。

 そして、地面すれすれまで落としたかと思ったら、一気に投げ上げるように神輿を高く掲げて両手を目いっぱい伸ばして支えるという荒業もある。これなど予備知識なしに参加したらかなり危険だ。

「これらの動きは、草加宿が舟運の盛んだった頃に舟頭の使っていた掛け声や動作が由来とされています。」(ジャズバー「シュガーヒル」ホームページ、「店長の戯言」2012年9月5日より

草加の神輿については、瀬戸健一郎さんが撮影してYoutubeにたくさん投稿しています。詳細な解説がとても勉強になりますよ。

草加宿 八幡神社祭礼 2016.7.17>

www.youtube.com

草加もみ」は草加独自の神輿作法だが、神輿を揺らしたり回したりするスタイルは全国に多くあるようだ。いや、もっとユニークで激しいものもたくさんある。

神輿 - Wikipedia

行徳の投げ上げる神輿

 千葉県市川市の行徳の神輿は極めてダイナミックだ。「行徳担ぎ」と呼ばれていて、全員で腰をかがめたまま神輿を上下に揺らす。そのまま回る。そして背を伸ばし両手を突き上げて神輿を掲げる。ついに上にひょいひょい投げ上げる!

平成24年 浦安三社祭 <豊受神社>宮神輿・西組=行徳担ぎ披露

www.youtube.com

小田原の走る神輿

 小田原の神輿は走る。複数台が並走する。その重量と速度から生まれる運動エネルギーを想像すると、危険の予感が漂う。

※「龍宮神社2基合体 小田原駅突っ駆け 4社例大祭

www.youtube.com

松山の神輿はまるで暴動

 そして、しばしば神輿は喧嘩する。

 愛媛県松山市の秋祭りの、神輿同士が正面からぶつかり両陣営の群集がもみあう動画は、まるで暴動のドキュメンタリーだ。

 ※「平成20年度立花神輿鉢合わせ」

www.youtube.com

 岸和田だんじり祭りの映像を見ても思うが、勇猛な男たちが重兵器を全力で運ぶような、古代の戦争のような荒々しさを神輿からは感じる。

宮田村の神輿は破壊する

 破壊にまで至る祭りもある。長野県宮田村の祇園祭では、神輿を石段から放り投げ、柱一本になるまで破壊する。

 神輿とは神様の乗り物なのだが大丈夫か? と心配になるが、神様を津島神社にお届けして降りていただいたあと破壊するらしい。

※「宮田村津島神社祇園祭あばれ神輿破壊2010」

www.youtube.com

 草加の神輿はそこまで極端なことはしない。

 だが、肉体の限界の感覚や、仲間との一体感や、個人を超えた何か大きな力を感じることは十分できる。

 だから、いつもは堅気な経営者や陽気な学生さんも、祭りの日は強面の祭り男に変身して神輿に挑むのだ。