草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

草加和太鼓祭りを経て子供たちは「練習したい欲」が芽生えたか

 9月4日(日)、草加市中央公民館ホールで12時から16時半ごろまで草加和太鼓祭り」が開催され、僕も草加太鼓クラブの一員として出演しました。

 すばらしいイベントでした。ぜひ毎年開催して欲しいです。あまり宣伝していなかったと思ったのに満員になっていました。来年も開催するなら、中央公民館では狭いでしょうね。

 出演は草加市内の市民団体9組と特別ゲストでした。

プログラム

草加太鼓クラブ草加どどん鼓連盟所属)

こうま座・草加民族文化の会草加どどん鼓連盟所属・合同チーム)

青柳太鼓愛好会

にっさと太鼓草加どどん鼓連盟所属)

小山太鼓保存会草加どどん鼓連盟所属)

草加保育魂

~和太鼓体験コーナー~

八幡太鼓草加どどん鼓連盟所属)

北谷太鼓草加どどん鼓連盟所属)

松並太鼓

秩父屋台囃子保存会(特別ゲスト)

  12時ちょうどに市長がステージに登場して開会の挨拶をしました。

 トップで出演する草加太鼓クラブはステージ脇で待機しながら、その挨拶を聴いていました。市長は、人類が太古から太鼓を叩いていたことや太鼓の連打は心臓の鼓動と呼応するというようなことをお話していました。

 でも、そんなお話は太鼓クラブの子供たちの耳には入っていません。僕達はこれから創設以来初めて大きな舞台で太鼓を演奏するのです。

 市長が退場し、照明が落とされ、草加太鼓クラブがステージに向かいました。長丁場のイベントのスタートなので、どうせ客席はガラガラだろうと高をくくっていたのですが、意外にもお客さんはいっぱいでした。

「ぶち合わせ太鼓」「夏祭り」「豊年太鼓」の3曲を披露しました。

 自分たちの実力から見てベストの演奏ができました。「どうだ!これが草加太鼓クラブだ!」と胸を張れると思いました。ほかの団体からもお褒めの言葉をいただけました。

 着替えをしていたので「こうま座・草加民族文化の会」は見逃しましたが、小さなお子さんが元気いっぱいに太鼓を叩くチームです。 

青柳太鼓愛好会」は初めて拝見しましたが、ものすごく小さい子も70代のおばあさんもいるチームでした。曲のレパートリーが広くて、担ぎ桶胴太鼓もやっていました。

にっさと太鼓」は女性だけの団体です。軽快になにげなく高度な技術を披露していてさすがです。

小山太鼓保存会」は、鬼のお面をかぶった3人が暴れまくって会場を沸かす「鬼太鼓」がすごいです。エンターテインメントです。「小山ばやし」は体の動きや手の振りも重要な要素になっているし、見せることを重視する姿勢は学びたいと思いました。

草加保育魂」は立ち見が出るほどの盛況でした。なぜならばメンバーは保育園の男性保育士たちだからです。保育園の子どもたちの「○○先生ー!」という歓声がすごかったです。

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 ↑ 三宅太鼓を演奏する草加保育魂

  保育魂は20分間の持ち時間を「三宅太鼓」1曲でやり通しました。4基の太鼓(うち1基は二尺の巨大太鼓)を横置きにして、腰を落として横からぶっ叩く、足腰に負担のかかる独特の三宅のスタイルで、力強く叩き続けました。すごい迫力でした。かなり鍛えてきたことでしょう。

 いちばん大音量を響かせていた人は、意外と腕の力が抜けているように感じたので、あの手首の返しを真似したいと思いました。右手の撥を完全に後ろに回してからひねるんです。バッティングよりもピッチングに近いかもしれません。左手はバッティングですが。

 ↓ 草加保育魂の演奏の様子

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八幡太鼓」は子供も大人もバランスよく含まれる団体です。「秩父屋台囃子」を壮大な構成で披露してくれました。

北谷太鼓」も子供と大人が混じって「秩父屋台囃子」をやりました。子供も上手なのが強みですね。

 草加太鼓クラブも「秩父」はレパートリーにあるんですが、ゲストの「秩父屋台囃子保存会」があとに控えているので、ここで演奏する勇気はもてませんでしたよ。

松並太鼓」は櫓(やぐら)太鼓と斜め台太鼓のかけあい、コール・アンド・レスポンスが印象的でした。斜め台は多くの団体が使用していました。盆太鼓(盆踊りの太鼓)をルーツとする団体なのでしょう。

 松並太鼓のひとりの女の子が、みごとな盆太鼓スタイルを見せてくれました。太鼓に対して完全に横向きのスタンスで足を大きく開き、腕を大きく振ります。特に左手の振りがあざやかでした。

 彼女の美しいフォームが理想像として目に焼き付けられるせいで、ほかの子供たちのそこに至らない動きにも視覚的な補正がかかり、全体のイメージが引き上げられる効果があったかもしれません。

 ダンス教室の発表会でも、先生が同じステージの端っこで踊ると、ああ、本当はこういう踊りをしたいわけね、とちょっと下手な生徒のダンスの潜在的な美点が引き出されるようなことがありますよね。

 さて、特別ゲストの「秩父屋台囃子保存会」はすごすぎて、申し訳ないけど市民団体の演奏が吹き飛びました。

 大太鼓1基と締太鼓3台と笛、鉦(かね)という構成でした。大太鼓を複数並べてアンサンブルを生み出す「鼓童」のようなスタイルは舞台用であって、秩父夜祭で実際に屋台の中で演奏される楽器構成は大太鼓1基が基本なんですね。そして楽曲構成なんて関係ないんです。打ち手が交代しながら延々と演奏が続くだけなんですから。

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 ↑ 秩父屋台囃子保存会

 屋台囃子の大太鼓は寝かせて置かれ、打ち手は太鼓の打面に正対するように座って叩きます(保存会の方は「はたく」と言います)。大きな音を出そうと撥のスイング距離を長く取るためには、上体を後方にのけぞらせて腕を後方に振り上げる必要が生じます。腹筋運動しっぱなしです。

 保存会の屋台囃子は、もはやうまいとか下手とかの次元を超えていました。力を抜くほうがかえって大きい音が出るとか生ぬるいことを言っていられません。とにかく全力。もちろん撥のスイングの高度な技術などとっくにマスターした上で、さらに力まかせです。だから激しい。爆音の連続でした。

 大太鼓の撥の振りかぶりは頭の後方に及びます。締め太鼓の打ち手ががすぐそばにすわっているのですが、絶対に当たりません。撥の軌道が一直線で決してぶれることがないからです。

 12月の秩父夜祭ちちぶよまつり)では朝8時からなんと夜明けまで演奏が続くそうです。「相当体力がいりますよね」と保存会のリーダーが言っていました。「相当」なんてそんなレベルではありません。もはやアスリートですよ。

 締め太鼓の「玉入れ」と呼ばれる間奏では超高速連打が繰り広げられるのですが(ベルのジリリリリリリリリという音の律動に近い)、「子供の頃からやっていなければなかなかできるようにはなりません」とのことです。

 屋台囃子は伝統とトレーニングシステムと発表の場が備わる秩父という土地だからこそ、こんなに先鋭化して発展したのでしょう。

 イメージが残っているうちに早く練習したいです。子供たちにも練習したい欲が芽生えたでしょうか。

 ↓ 秩父屋台囃子保存会の公演の様子

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