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草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

「渡辺美佐子 朗読会」で染谷洌氏は情感あふれる美しい文章を絶賛した

 3月4日(金)、アコスホールにて渡辺美佐子 朗読会」が開催されました。主催は草加おかみさん会。全体は三部構成です。

 第一部はシンガーゆかり「歌のステージ」です。第二部は「渡辺美佐子 朗読&対談」。第三部は「草加七福神『歌とダンスのステージ』」。

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ゆかりさんの歌声は中低音の豊かなゴスペルの味わい

 第一部のゆかりさんは、福島県いわき市出身のシンガーです。

 東日本大震災被災した経験を経て、福島県復興の願いを込めて、活動しています。

 ご自身が作詞作曲した歌を3曲歌いました。中低音の豊かな歌声が特徴で、R&Bやゴスペルの味わいがある、スケールの大きい曲でした。

YUKARI My Life Official Website.

 

渡辺美佐子さんは83歳にして現役バリバリの女優

 第二部で渡辺美佐子さんの朗読が披露されました。

 渡辺美佐子さんは御年83歳の女優で、今井正監督の「ひめゆりの塔」(1953年)でデビューし、以後コンスタントに映画に出演しつづけ、100本以上の出演作があります。最近の作品では「舟を編む」があり、また舞台出演テレビ出演も多く、現役バリバリです。

 朗読した作品はご自身の著書「ひとり旅 一人芝居 」からの一編りんごのほっぺという随筆です。

「りんごのほっぺ」は、「決して結ばれることのない切ない恋を初恋というならば、これはまさしく私の初恋である。」という書き出しから始まる、ご自身の体験をもとにした文章です。彼女は戦中の小学生時代に出会った少年に淡い気持ちを抱いていましたが、1年とたたないうちに彼は姿を消し、そのまま消息不明となりました。

 彼女はその少年が気がかりでたまりません。「おばさん」になってから、同窓会で旧友にたずねても消息がつかめません。

 その後たまたまテレビのご対面番組に出演する機会を得て、その少年との対面を希望しました。

 番組の当日、現れたのは、高齢のご夫婦でした。そう、少年のご両親です。

 少年は広島に疎開し、原爆で命を落としたのでした。

 渡辺さんはショックで何も言えなくなりましたが、ご両親は「覚えていてくれてありがとうございます」と口にするのでした。

 それから5年後の1985年、渡辺さんは、原爆によって父母を亡くした子供や子供を亡くした両親の書き残した手記を女優たちが朗読する『この子たちの夏という舞台に参加するようになりました。その舞台は一旦中断したあと復活し、現在も継続しています。

「夏の雲は忘れない」全国公演日記 - livedoor Blog

 

短いながら大きな単位の時間の流れ・歴史が組み込まれている

 渡辺さんの朗読の声はとても穏やかで、約15分間でしたが心地いい時間を過ごすことができました。

 ただ、その短い作品中には、何十年も前の子供時代のみずみずしい情景と心情の描写から、一気に後年のテレビ番組のご両親のつらい記憶の語りへと跳躍し、そこから現在の朗読劇の活動に繋げるという、大きな単位の時間の流れ・歴史が組み込まれているのでした。

 その後の対談の参加者のひとり染谷洌(きよし)さん(埼東文化会会長)が、朗読の感想を問われ、情感あふれる美しい文章を絶賛しました。まったく同感でした。

 文学作品としての評価を真っ先に口にするところ、さすが文芸評論家だと思いました。

「りんごのほっぺ」の全文が、NHK高校講座の「国語総合 現代文編」のテキストに収録されているのを発見しました。以下のPDFファイルの後半にあります。

NHK高校講座

 

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