11月8日(日)「室伏広治 スポーツ・健康づくり講演会」を聴きに草加市文化会館に行ってきました。
ハンマー投げのオリンピック金メダリストにして、日本最強(人類最強という説もある)トップアスリートの室伏さんは、東京医科歯科大学教授・スポーツサイエンスセンター長であります。
第1部 室伏教授講演会「アスリートから見た健康づくり」
舞台正面にスクリーン。向かって右の演台に室伏教授が立ち、ノートPCを操作しながらスクリーン投影されたプレゼンテーション画面をめくっていました。
2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致にまつわる話から始まりました。
室伏教授は2016年招致のときに重要な役割を演じたそうで、大事なプレゼンテーションのために、イギリス人コーチ(だったかな?)によるプレゼンテーションのトレーニングを受けたそうです。2020年のときの「お・も・て・な・し」もコーチが伝授したものだったようです。
さてトレーニングを受けてきた教授によるプレゼンテーションがこれから始まります。
なぜ運動するのか? というテーマがあります。
日本では簡単にはスポーツ施設が使えません。したがってどこでもできるんだという心構えが必要です。
室伏教授は今は日本のスポーツの顔であり、世界を飛び回っています。まとまってトレーニングできる時間がありません。そこで、ゴムのバンドをいつも持っていて、よくトレーニングするそうです。
早速僕もあとでメガドン・キホーテ草加松原店に寄って、「のびのびエキスパンダー8の字」というのをつい買ってしまいました。
さてスポーツには幸福感、楽しさが伴います。
そういう意味ではけん玉もスポーツです。実は今アメリカで大流行していて、競技として認められているそうです。
そして、運動するとアクティブになります。気持ちが高揚します。ますます運動をやる気になります。
やる気になったら運動しよう、ではなく、とにかくちょっと運動してみると、やる気がどんどん出てくるのです。
また、運動すると脳内物質が出てきます。ドーパミン、エンドルフィン、ノルアドレナリンとかそういうものです。
その状態では記憶力が高まったり、脳内バランスが調整されるなど、精神状態も良好になります。
ちょっとした運動の例として、ゴムバンドの例以外に、室伏教授は新聞紙を使った例も挙げました。片手で新聞紙を丸めるという簡単な運動があるのだそうです。
「新聞紙ある?」と客席のほうに声をかけましたが、とくに誰も動きせんでした。
「新聞紙が出てこないので先に進めます」
宇宙飛行士は地球に帰ってきたら歩けないという例が示されました。逆に言うと、地球の生物は1Gという重力に耐えて生きているのです。
もしかしたら赤ちゃんが誕生のときに泣くのは、1Gのつらさを感じたからではないかというおもしろい視点が示されました。
さて赤ちゃんです。
赤ちゃんはほとんど筋力がない状態から、1年間訓練して歩けるようになります。
ふと室伏教授は新聞紙を思い出します。
「新聞紙がなかなか来ない。あ、来ました。新聞紙ありがとうございます」
新聞紙はさておき、チェコのコラー博士が、筋力に頼らずに起き上がり歩き出す赤ちゃんの能力を研究しているそうです。
室伏教授はコラー博士の指導によって、その肉体訓練を実際に経験したそうです。
よく事情がわからないのですが、その訓練の写真は、まるで室伏教授が筋力を失ってしまって、最新のリハビリテーションを伝授されているように見えました。
「腰が痛い人はいますか?」と室伏教授。
かなり多くの方が手をあげました。
ここからは専門的でちゃんと理解できていません。
赤ちゃんは胸で呼吸するのではなく、腹部の「ボックス」の運動によって呼吸している。「腹圧」が重要。
さて、呼吸のしかたが悪いと腰痛になる。ボックスの形が悪くなっていて、椎間板が変形してしまうのだそうです。
とても興味深い話なので、この話題だけで1講演して欲しいと思いました。
室伏教授の話は急変します。
「世界の難民の数は何人だと思いますか?」と室伏教授は問いかけました。
なんと6,000万人もいるのだそうです。
それだけいると、オリンピックに行ける素質がある人もいるいるでしょう。そんな人達の夢を叶えさせる人道支援の運動があるというのです。
そしてそのような支援から優秀なアスリートが見出されている実績があるそうです。
日本にも才能があるのにその才能が活かせない人がいます。支援したいものです。
第2部 パネルディスカッション「スポーツを通じた健康づくり」
休憩のあとはパネルディスカッション。テーマは「スポーツを通じた健康づくり」。
参加者は
・室伏広治さん
・南和(かず)さん(草加市立病院救急科部長)
・神白(かじろ)高子さん(草加市バレーボール連盟副会長・モントリオールオリンピック金メダリスト)
・上羅(うえら)廣さん(草加市スポーツ推進審議会会長)
・田中和明草加市長
以下、気になった話をピックアップします。
神白さん「室伏さんは中京大学の後輩。お父さんも中京大学出身で同世代」
田中市長「草加松原太鼓橋ロードレース大会に3回出場している。ほぼ毎朝、公園のラジオ体操に参加している」
室伏教授「スポーツとは今いるところから抜け出すことというような原義がある。つまり気晴らし」
室伏教授「新聞紙がない。あ、来た」
室伏教授は市長や神白さんに新聞紙を渡しました。
テーブルに広げて置いた時点から、片手で掴んで、丸める。手の中にすっかり入るまで手や指を動かし続けるのでした。
室伏教授「指の筋肉も使うし頭も使う。新聞紙は毎回違う状態になるので、毎回工夫する」
南さんがスクリーンで太鼓橋ロードレースの紹介をしました。市立病院チームがレースに参加した話や、マウンテンバイク隊がAEDを背負って走り回っていた話。このロードレース大会が「ランニング大会100撰」に選ばれたそうですが、救急体制も評価されたのではないかと自負していました。
また、南さんが率いる災害派遣医療チームは日本全国で活動しているとのこと。
ところで南さんの原稿を読んでいるかのような(実際には一切原稿を見ていません)、丁寧で見事な弁舌にも感心しました。
上羅さんからは興味深い指摘がありました。
草加市が2020年東京オリンピックに貢献できるだろうかという話で、最近、草加市スポーツ健康都市記念体育館で車椅子バスケットボールの大会が開催されるようになった。ならばパラリンピックを記念体育館で、という希望を持ちたい。
ところが、バスケット用の車椅子が記念体育館のエレベーターに入らないのです。
「つきましてはエレベーターを改修をして欲しいのですが、市長、いかがでしょうか」
場内に大きな拍手が起こりました。
市長はマイクを取りましたが、聖火リレーが草加松原を通るように運動しているとか、パラリンピック会場誘致の話とかの話をして、エレベーター改修問題に対して「はい」という明快な返答は避けるのでした。
ところが最後になって室伏教授がエレベーターの話を蒸し返しました。まるで新聞紙の話を何度も蒸し返したように。
「エレベーターの件もよろしくお願いします」
市長はあいまいにうなずきました。
最後に草加市立病院の高元俊彦院長が挨拶しました。
実はこの講演会には「隠れたミッション」があるということでした。今年の正月に、東京オリンピックの聖火リレーのコースとして草加松原を選んで欲しいという運動をしましょう、そして室伏教授にその応援隊長になっていただきましょう、と誓い合ったのでした。
そもそも草加市立病院と東京医科歯科大学は深い関係があるようです。草加市立病院のドクターたちは、東京医科歯科大学でみなさんトレーニングを受けて来た。
そんな医科歯科大コネクションで今回の講演会も実現したようです。