第4回 草加松原展という美術展が9月18日から24日まで、草加市文化会館1階フリースペースで開催された。
2013年の3月に第1回が開催されてから順調に来場者が増え、今回は1,000人を超えたようだ。
これまでは写真がメインだったが、今回は絵画の多さ、多彩さが目立った。
壁中にたくさん掲げられた花の絵画は押し花作品。幻想的だけど花びらが画材だからか物質感もあるのが不思議だった。
「上野の街」という油絵作品はどうしても日本の街に見えなかった。海外の方の作品だそうだ。なるほど日本語の看板がたくさんある。
空中に、建物や看板の組み合わせによって形作られたかのように、円形が浮かび上がっている。そんな構図が実際の上野の街にあるのだろうか。それとも作者による幻視なのだろうか。上野に行って確かめたくなってしまった。
また。この作品中の道路の中心部分に、道路と同系色の猫がいることを、草加松原展代表の染野さんから教わった。教わるまで気が付かなかった。
謎が多い作品だ。
染野さんの案内で次々と面白い作品に出会った。
ヨーロッパの紳士と淑女が親しげに立っている絵は「会議は踊る」というタイトルで、まさに、かのミュージカル映画のワンシーンだ。
この方は映画の看板を描いていた高齢の画家だそうだ。映画の絵はお手の物というわけである。面白い人を引っ張ってくる染野さんのプロデュース力にはいつも感心してしまう。
この方のもう1枚の作品はセーラー服の端正な少女がヴァイオリンを持っている絵。これも映画? と思ったが、この肖像画のモデルは諏訪根自子(すわ ねじこ)さんといって、一昨年92歳で亡くなった美貌の天才ヴァイオリニストなんですね。写真をもとにして描いたようだ。
※参考:
【TVに出ない美女図鑑】朝ドラっぽい?柳原白蓮より波乱万丈な大正生まれ天才美少女 諏訪根自子 - いまトピ
草加駅東口の旧道沿いにあるアトリエ「ひだまり」の運営者の作品、絵と書と人形が展示されていた。
「土」という書は息子さんの作品だそうだ。ぶっとくて、たくましくて暖かい文字。土そのもの。
ひだまりは、看板は見かけるものの通路が長く狭いため中に入るのがためらわる画廊だったが、10月3日から5日まで、草加宿場まつりに合わせて作品展が開催されるそうなので、覗いてみよう。
会場の奥が写真スペース。まず目立つのはスペースの中心に立つ2枚の衝立(ついたて)。表裏に写真が貼られている。獨協大学写真部のコーナーだ。
染野さんが「これをぜひ見てご覧なさい」と1枚の写真に誘った。
水辺(川?)に立つ2人の女の子。互いを見て、笑い合っている。
「こんな自然な笑顔が撮れるのは友達同士だけ」
おそらく被写体の2人も、撮影者も、獨協大学写真部の友人たちなのだろう。
「第三者のカメラマンが人にカメラを向けると、必ずカメラを見ちゃうよ」
なるほど写真部員たちは、みんながカメラマンであり同時に被写体でもある。そういう独特な関係が活かされた写真がこれなのだろう。
「写真部写真」とでも名付けたくなるジャンルなのかもしれない。
さて、僕の娘(中学3年生)は、第1回からずっと出品している。今回も2点だ。
1枚は「トンビと月」。トンビと月が写っている。
もう1枚は「幻視」という作品。
車のボンネットから突き出た2本の同じ形のフェンダーミラーがある。両方とも鏡面をこちらに向けている。ということはミラーは同じ車種の2台の車から突き出たもの。フェンダーミラーを採用する車と言えばタクシーだ。
さて2枚のミラーに何かが映り込んでいる。
写真の搬入の時、2、3人のカメラマンがこの写真を見ながら、ミラーに映り込むものを言い当てようとした。
「海だ。太陽が反射して海面が光っている」
「橋が架かっているし、これは川だ」
実は正解は別のタクシーのボディが映り込んでいるだけなのだ。太陽光が当たり、光輝く水面に見えてしまったのだ。
ここは駅前のタクシープール。背景はピントが外れぼけているがお店であることがわかる。海や川とは無縁な場所で海や川のようなものを見てしまう。
それで「幻視」なのだ。
ミラーの縁にはまるでアサガオのようなフレアも見える。
↑「幻視」写真を会場で撮影した。