草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

途中で地震が発生(の設定)→観客が避難(訓練)、という画期的なコンサート

2014年9月13日に草加市文化会館で「避難訓練コンサート」が開催された。

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13時30分
開場。入場口に並ぶ客たちがどんどん入って行く。
客席に着いた客の人数は100数十人というところだった。ホールの規模からするとガラガラに見えた。

14時
オレンジ色のビブスを着用した女性職員がステージ上からこれから行われるイベントの概要の説明があった。

・これから埼玉県警音楽隊によるコンサートが始まる。
・コンサートの途中で地震が発生する。
・まず椅子の間に身を隠すこと
・係員の指示にしたがってホールから出る。非常口は客席の左右と後方の3箇所。
・係員の誘導にしたがって指定の避難場所(駐車場)に移動する。
・ホールの隣の建物「コミュニティ棟」の2階で火災発生という設定もあるので、避難ルートに配慮する。

 
14時5分ごろ
埼玉県警音楽隊の演奏が開始される。
1曲めは「踊り明かそう(映画「マイ・フェア・レディ」より)」。白い制服を着用した音楽隊は総勢たぶん34名と指揮者(隊長)。
すばらしい演奏。警察とか自衛隊とかの楽団ってほんとレベル高い、と改めて痛感する。
曲が終わって拍手を受けてから、中央に座っていたオーボエ奏者が立ち上がり、マイクを持って話し始める。ここからは彼が曲目解説などの司会を務めるのであった。歯切れよく、また口当たりが柔らかくユーモアもある、ほとんどプロの領域。
司会者はまず音楽隊の紹介をする。埼玉県警音楽隊は1958年設立だそうだ。
などと話を進めているとき、それは来た。

14時12分ごろ
不気味な音がとどろきだした。
ゴーーーー!!
ステージ上では音楽隊が冷静に座っている。
ステージ上に女性職員が現れた。
「訓練、訓練、訓練!」
と言ってから、
地震が発生しました。震源宮城県沖、マグニチュード7.5。草加市震度5強
けっこう大きい(という設定)。
職員に指示に従って、椅子の間にかがみ、身を隠す。その姿勢が取れない方は椅子に座ったまま、頭をバッグなどで覆って守る。
僕は床に身を沈め、丸くなった。
「避難経路の安全が確認されるまでそのまま待機してください」と職員。
ということで、そのまま待つ。けっこう長い。
そーっと頭を起こして周りを見回した。
客たちの姿が見えない。つまりみんな身を隠している。
素直に指示に従っている。素晴らしい!
でもこれをやりにわざわざここに来たのだから当たり前か。
「避難経路の安全が確認されるまでそのまま待機してください」と繰り返す職員。

2時20分ごろ
「避難経路の安全が確認されました」ということで避難開始。オレンジ色のビブスとヘルメットを着用した職員たちと消防士が各非常口からの避難行動を誘導した。
僕が座っていたの場所はやや後ろ。後方出口のほうが近いが、左出口のほうが空いていたので、そちらへ移動した。
左出口を廊下に出てすぐ右手の扉が開いていて、屋外が見えていた。列に従ってゆっくり階段を降り、屋外に脱出した。
階段は段差がちょっと大きくて、高齢の女性が「降りるのがきつい」と言っていた。そして「この階段はきついと覚えておこう」と言った。今度避難することがあったら、後方非常口を使ったほうが楽かもしれないと。
列に従って避難場所(駐車場)に向かってゆっくり歩いた。コミュニティ棟のそばを歩いた。
「あ!コミュニティ棟は火事だったんだっけ」
とそばの男性が言った。
「しまった! こっちを歩いたらいけなかったんだ」
と僕は言った。

14時25分ごろ
全員避難場所に集まった。
職員がひとりずつマイクで自分の持ち場について「避難完了しました」と報告した。
避難完了である。
消防署の方が講評を述べた。
14時30分からいったん休憩に入った。

15時
コンサート再開。
5曲目の「帰れソレントへ」では、カンツォーネの男性歌手が歌うべき主旋律をチューバ奏者が担当した。伸ばされた音にはビブラートがかかっていた。ずいぶんと高い音も響かせていた。チューバってこんなに朗々と歌えるんだ。

途中でPRコーナーがあった。

警察への電話番号「110」は緊急性の高い要件のみにご使用ください。
緊急性の高くない相談電話は「♯9110」へお願いします。

 という内容だった。
また、司会者(オーボエ奏者)が念のためとこう話した。
「さきほどの地震発生時に我々がステージで黙って座っていたのは訓練だったからです。我々も警察官ですから、本当の地震が起こったら避難や誘導のために動きますよ
全9曲を演奏し、アンコールの「花は咲く」も演奏してコンサートは終了した。