草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

草加松原太鼓橋ロードレース大会は応援をフィーチャーした野心的な実験

草加で太鼓と言えば草加太鼓クラブ

3月16日(日)、第3回草加松原太鼓橋ロードレース大会が開催されました。

さて、草加で太鼓と言えば「草加太鼓クラブ」があるではないですか。僕が所属している和太鼓サークルですが、「草加」と「太鼓」という文字が大会名と重なるという縁を感じ、和太鼓の衣装、腹掛けと股引を着け、頭に鉢巻を巻いて参加しました。撥を持つのは遠慮しました

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※スタート前に谷古宇隆一さんに撮影していただきました。

草加駅から徒歩5分ほどのところにある草加小学校が大会メイン会場。選手は小学校の体育館で着替え、正門前の狭い商店街からスタートして、小学校に帰ってきます。

午前9時、スタートです。10キロコース参加者は約2000人とのこと。狭い商店街を北へ、ランナーの渋滞がじりじりと進みます。

すぐに広い道路、旧4号(埼玉県道49号足立越谷線)に移り、南に向かってこのへんからだんだんスピードが出始めます。するといきなり折り返しがあって驚きました。人が多くて折り返しコーンが見えなかったのです。まだみんな元気でスピードがある団子状態のまま急激な方向転換が起こったのですから、ちょっと危険の予感。スタートからこんなに早く折り返しが設定されているレースはあまり例がないだろうと思います。

草加市民が自慢したいポイント、草加松原を走る

伝右川沿いから札場河岸(ふだばかし)公園付近を綾瀬川沿いに巡るコースに移ります。道幅が狭くやや足元が悪い。

応援の部でエントリーした歌手、上原深生さんがギターを弾きながら歌っていました。氣志團の歌を歌うグループもいました。獨協大学軽音楽部ロックセクションです。ただし氣志團の曲をそのまま流し、それに合わせて歌ったり踊ったり手を振ったりするパフォーマンスでした。氣志團のあとZARDになったかな。励まされる選曲です。選曲は大事です。

以前参加した「つくばマラソン」の沿道で、大型ラジカセで「ロッキーのテーマ」をエンドレスでかけ続ける男性がいたけれど、彼の前ではほとんどの選手が両手を突き上げていたと思います。あのときウオー!ってつい声を上げてしまった人は僕だけではないでしょう。

太鼓橋その1「百代橋」に到着です。この橋は「ひゃくたいばし」と読まれていますが、芭蕉奥の細道の「月日は百代の過客にして」は「つきひははくたいのかかくにして」と読むと学校で教わったので「はくたいばし」が正しいのではないか、などとどうでもいいことをふと考えながら登りました。

ちなみに昨年の大会で、後方の集団では百代橋のふもとで順番待ち渋滞があったと聞いていたので、スタートの位置取りは後ろになり過ぎないように気をつけていました。

日本の名勝「草加松原」の松並木を走ります。この大会で草加市民が自慢したいポイントです。ただし残念ながら石畳でかなり足場が悪いため、つまずかないように、足をなるべく高く上げるように意識しました。疲労が蓄積して後半へのつけになるだろうなと不安がよぎります。後半のスタミナ切れした足では、石畳コースはけっこうあぶないと思いました。

◆太鼓の音はずっと前から聞こえ始めた

綾瀬川にかかるハープ橋を渡って、広場入り口の獨協大学軽音楽部ハワイアンセクションの演奏(なにか変わった扮装だったかな)を見ながら、綾瀬川左岸広場へなだれ込みます。ずっと前から太鼓の音が聞こえ始めています。この広場は、草加ふささら祭りを始め草加のイベントの中心地。ここで3団体が応援を繰り広げています。

その応援の合間を縫うようにロープで仕切って、コースが作られています。折れ曲がりの連続です。

まず音だけ遠くまで聞こえていた「草加どどん鼓連盟」の姿が見えます。連盟所属の2団体「小山太鼓保存会」と「北谷太鼓」がそれぞれ演奏しているのです。どちらも子供たち中心の元気なグループで、その太鼓の「行け!行け!行け!!」と急かされる音、励まされる音で、ランナー達の足がどんどん回転していきます。顔見知りのメンバーが手を振ってくれたので、みんなの代表で走ってるよ!と胸を張り腕を突き上げました。

◆アイドル対決が勃発

草加のローカルアイドルグループ「おSENちゃんが~るず88」が歌って踊ってくれています。こっちも頑張るけど、君たちも頑張れ!という気持ち。

よさこいの「team清門」もいます。小中学生中心のグループですが、完成度が高い上に勢いがある、草加を代表するよさこいチームです。ある意味「おSENちゃんが~るず88」のライバルともいえるアイドル性の高いグループアイドル対決か。こりゃteam清門は応援の部の今年の優勝候補だな、と思いました(実際、優勝しました)。

さあたっぷり応援のパワーをもらいました。松並木の石畳コースに戻り、太鼓橋その2「矢立橋」の上り下りを経て、ここからしばらくは淡々とレースに徹します。

東京外環自動車道手前に達し、綾瀬川を渡る橋を走ります。ここにカメラマンがいたのですが、ランナーの背後に綾瀬川と松並木が見える構図が想像できました。絶景ポイントと言えるでしょう。

◆折り返しが遠く感じるのは本当につらい

文化会館付近で東へとコースを変えます。センターラインの反対側は、折り返しのランナーたちが続々と走ってきます。自分よりも速い人たちです。この先に折り返し地点があるわけです。それは産業道路にぶつかるところだとわかってはいるのですが、もうすぐかな?まだかな?全然来ないぞ、という待ち遠しい気持ちが大変つらい場面です。後半の折り返しはいつもつらいです。

ようやく折り返すと、反対車線はこんどは自分よりも遅い人たち。苦しそうな表情のランナーがいっぱい。歩き出した人もいます。つらさがよくわかります。よくわかるよ、と声をかけたくなります。

綾瀬川沿いにコースを移すと、また、太鼓の響きが聞こえてきました。左岸広場に戻って来たのです。team清門、おSENちゃんが~るず88の演舞を見て、草加どどん鼓連盟のとびきりの応援を受けることができました。どどん鼓はホームだなと実感。

そして、メイン応援会場である左岸広場のレース全体における位置がかなり絶妙であることに気が付きました。レース序盤では盛り上がっていこうぜ!とぶち上げる効果、後半に再び左岸広場にたどり着くと疲労と痛みでぐったりしたランナーたちに最後の力を注入する効果があるのですから。

松並木コースから、再び太鼓橋その1「百代橋」へ。なんと3度めの太鼓橋登坂。ふざけるな!(笑) 後半の疲労した足に階段は厳しい仕打ちですよ。歩いている人がいるのは無理もないです。

◆応援をフィーチャーしたこの大会は野心的な実験

必死で旧4号を走り抜け、最後の力を振り絞って狭い商店街(旧道)に到達。沿道は応援がびっしり。残りわずかのスタミナを使い切ることができたのは、このフィニッシュ直前の応援のおかげでした。こうしてスピードに乗って草加小の正門を通り、ゴールゲートを突破することができました。

シューズに括りつけた計測チップを、応援の部の投票箱に入れました。やっぱり草加どどん鼓連盟に1票です。

マラソンやロードレースって、本当に気持ちに左右されます。以前読んだ『BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”』という本に、どんな難コースでも笑いながら踏破する精神が強いランナーの証と書かれていましたが、笑顔の応援に笑顔で応えると、本当に疲れが消えるんですよね。孤独に走るときと応援に励まされながら走るときは、明らかに記録に違いが出ると思います。

応援の存在を大きくアピールするこの大会は、かなり野心的な実験とも言えるのではないでしょうか。

BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”

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