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草加小話

埼玉県草加市での暮らしで拾ったエピソードとそうでないエピソードを綴ります。

よさこいサンバフェスティバル。 「違うけど同じ」と「同じだけど違う」

7月23日(土)と24日(日)は、草加駅西口で草加よさこいサンバフェスティバル2016が開催されました。

今年も平塚から来た女性だけのヨサコイチーム「疾風乱舞」に注目しました。

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結成11年、コンテスト優勝しまくりの名門チームです。そんなチームが、はるばる草加のイベントに2013年から4年連続で出演してくれています。

毎年新しい楽曲、新しい衣装、新しいダンスを作り上げてきます。毎年壮大な曲なのですが、今年は壮大過ぎて把握しきれません。フルオーケストラに混声合唱まで入っています(オーケストラは打ち込みかもしれませんが)。

今までは基本のリズムは強いビートのロックで、そこにオーケストラや三味線などが加味されていたのですが、今年はロックビートを廃し、クラシカルな重厚さを強調しています。ハリウッドの大作映画の音楽みたいです。よさこい節のフレーズが入ってくると、急に時代劇映画風になってきますが。

草加のメインステージはスペースに奥行きがあまりないので、疾風乱舞の構成美は活かしきれなかったようです。

こちらの動画が本来の姿かと思います。


疾風乱舞ー英姿颯爽4K

ジャズダンスがベースにあり、一人ひとりが自分が主役だと言わんばかりに目一杯大きな動きを見せる。なのに全体としてひとつの生命体のような統一した躍動が見える。いいダンスはきっとみんなそうかもしれませんが。

疾風乱舞に限らず、ヨサコイの音楽はますます多彩になっています。

演歌・歌謡曲調、民謡調、ハードロックやヒップホップ、アニメ風の曲も。同時に衣装やダンスの振付もなんでもありです。

ヨサコイの音楽を請け負う作編曲家たちはしのぎを削って新しい表現をどんどん開拓し、ジャンルのひろがりは膨張宇宙の様相を呈しているところです。

そのようにヨサコイはなんでもありなのに、演舞を見て音楽を聴いてみれば、それはヨサコイだ、これはヨサコイじゃない、と誰もが判断できます。それが面白いと思います。

一方サンバ。

生音のサンバパーカッションはやはり大迫力で、独特の16ビートには身も心も揺らされます。

指揮者がホイッスルを吹きながら指示を出し、パターンが次々と変化し、パレードにうねりを創りだしています。

さて、サンバのチームごとの音楽の違いは何でしょうか。

基本のリズムパターンはみなさん同じものを使っているし、素人には違いを聞き分けることは困難です。

でも、サンバ通の人には、音を聴いただけで聞き分けられるのでしょう。大違いじゃないか、と言うかもしれません。

僕は阿波踊りを10年ほどやっていました。阿波踊りの鳴り物ってチャンカチャンカという弾むリズムで、どの連も同じようなものですよね。でもいくつかの有名連の鳴り物は聞き分けられましたよ。さすが娯茶平! ってうっとりしたりして。

 

ということはヨサコイとサンバは逆なのかな。

 

ヨサコイはチームごとに全然違う音楽ジャンルやダンススタイルだけど、集合のベン図の交わりの部分に何か濃い色の共通項があるような気がします。

その共通項が強く訴えてくるのです。

「これはヨサコイだ!」

そして、個々のヨサコイがあまりにも多彩だからこそ、全体的な同一性を強く意識するのかもしれません。「でも結局同じだよね」と思いたい。

同一性の中身を言葉にするなら、日本的なるもの」とか「絆」とか「気合」とかでしょうか。

そんな同一性を共有できない人やチームは、ヨサコイをやるのは難しいかもしれません。なにしろ「型」がないのですから。

サンバは基本は同じようなリズムパターンですが、そこから微妙に変化させて独自の構成を作りあげて、チームの色を出していきます。

聞き手はお馴染みのいつものサンバという型を踏まえた上で、チームごとの違いを見出して楽しんでいきます。つまり、サンバでは意識のベクトルは同一性から差異性へと向いている。

ヨサコイとサンバの違いは何? 「違うけど同じ」と「同じだけど違う」?。それは大違い? それとも似たようなもの?

 

↓参考までに去年よさこいサンバフェスティバルについて書いた記事。

jitsuni.hatenablog.com

草加出身のミュージシャン立川俊之さんはデビュー25年の今が全盛期ではないでしょうか

 6月3日(金)、草加市のアコスホールで開催された「大事MANブラザーズ 立川俊之ライブ」に行ってきました。

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 草加市出身の立川俊之さんが草加で開いた凱旋コンサートです。ロビーにたくさん飾られた花束の中には中学の同級生という森尾由美さんから届けられた花束もありました。

 立川さん、トークが面白くてしかも長くて……(笑)。

 たとえば、ベースの若者(実は34歳)が大阪府八尾(やお)市出身で、八尾はどうもぱっとしない街という点で、草加と共通するところがあるというのです。どちらも「来夢来人(ライムライト)」という名前の喫茶店がありそうな街だというのですが、どんな比喩だ。

「そんなぱっとしなくて台無しな街を、「ダイナシティ」といいます」と立川さん。なるほど! と心にメモしました。

 あと、女性コーラスが2人いたんですが、そのうちの1人を「昭和臭」がするって立川さんが決めつけるんですね。遠くから見ると長身の美人で、どこが昭和臭なのかわからないんですが。

 で、彼女はスナックのママが似合う、店の名前は「スナック雫(しずく)」がいい、この際名前も「しずく」に改名しろって、強引に話を進め、「スナックの場所は錦糸町がいいか。いや最近あっちのほうがスカイツリー効果で垢抜けてきたから、上野がいい。上野もだめだ。竹ノ塚がいい」という展開に。

 「竹ノ塚」という、草加市民にお馴染みの、草加に隣接する足立区の街の名前が出てきてお客さんは大受け。

 さらに立川さんは竹ノ塚論を展開します。

「竹ノ塚ってのは、足立区のやさぐれ感が草加に流れ込まないように全力で堰き止めている街なんですよ」

 草加市民たちはみんな「うんうん」と納得です。バンドメンバーは首をかしげていました。

 コーラスの「しずく」さんは、竹ノ塚に店を出したら、みんな来てね、と明るく言ってました。

 立川さんや大事MANブラザーズバンドについては、大ヒットした「それが大事」ぐらいしか知らなくて、当時僕はまだ草加市民じゃなかったこともあって、あまり関心を向けていませんでした。それどころか、一発屋の1人という認識でした。もっとも一発屋という評判についてはご自身もテレビ出演で自虐的に認めていたようです。

 でもデビューから25年間、プロとして音楽をやってきた歳月はダテではなかったことが、バンドの音からわかりました。

 ドラム、ベース、キーボード、サックス、コーラス(2人)、ギター、そしてボーカルとギターの立川さん。合計8人の編成。手練のバンドマンたちの集まりでした。

 メンバー紹介によると、長い人は20年とか15年とか、バンドメンバーとしていっしょに音楽を作ってツアーしてきた仲間なのだそうです。

 だから、音楽については阿吽(あうん)の呼吸です。

 立川さんが懐かしいドラマ「傷だらけの天使」や「太陽にほえろ!」のフレーズをギターで奏でると、もう一人のギタリストやキーボーディストが合わせて来て、サックス奏者がむせび泣くメロディーを吹き上げます。いいねえ!

 また昔、森高千里の「渡良瀬橋」に刺激されて、松原団地の昔の風景を歌いこんだ「いちょう通り」という曲を作ったんだけど、Bメロをすっかり忘れてしまった、と言いだします。

 そして「今ここで作ります」と宣言して、ギターをかき鳴らしながら数分打ち合わせして、見事に披露して見せました。いつか完成させてネット配信するそうです。草加の新しいご当地ソングですよ!

 草加市立栄中学校の校歌をジャズっぽく歌います、という突然のコーナーもありました。立川さんが複雑な代理コードでジャジーなフェイクを取り混ぜて気だるく歌い出すと、サックスが粋なアドリブソロを入れてきたりしました。元の校歌を知らなかったのが残念。

 音楽が大好きな仲間と楽しく楽器で会話しながら25年間を過ごしてきたのでしょう。立川さん、ギターめちゃくちゃうまいし。

 8人編成のバンドが織りなすサウンドは、16ビートが中心のAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)と言えるのでしょうか。最近はあまりAORという用語は使われないかな。ゴリゴリのロックというよりも、洗練されたコード進行やアレンジの曲を、スピード感のある演奏で惹きつけるような感じ。だからというわけかどうか、ドラムの左手のスネアの打撃が力任せではない、という印象でした。

 その最先端に山下達郎がいるような世界って言うのかな。ちなみに山下達郎バンドにもコーラスとサックスは不可欠ですね。

 そんなサウンドに乗せて、美声というよりはアクの強い、25年歌い続けてきて鍛えられた歌声によって、25年やってきたから自然と説得力を持ってしまう言葉(って立川さん自身が言ってた)が心にびんびん響きます。

 若い時は垢抜けないように見えた顔は、50歳になったら味のある不良オヤジになって魅力的です。立川俊之さんは今こそ全盛期ではないでしょうか。

立川俊之オフィシャルウェブサイト

 

日本の響。20年後に邦楽の世界が大きく発展しているとすればその原点はここだったと言われるような歴史的コンサートになる

 来る9月10日(土)に草加市文化会館ホールで開催されるコンサート、「日本の響(ひびき)・・・草加の陣~邦楽のパイオニア達の共演~」のプレイベント(記者会見)が、5月27日(金)に行われ、コンサートの出演者の1人、尺八奏者の中村明一(あきかず)さんによるコンサートの説明と、尺八の演奏が行われました。

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尺八奏者中村明一さん(左)と、草加市文化会館館長の山崎大樹さん

【コンサート情報】

コンサート名:日本の響・・・草加の陣~邦楽のパイオニア達の共演~

「様々な和楽器において先進的な試みを行い、新しい分野を開拓してきた先駆者たちが一堂に会し同じ舞台に立つという、これまでにない試みであり、来場者にとっては、そうそうたる顔ぶれの名演を一度に聴くことができるまたとない機会となる。」(プレイベント資料より)

日時:2016年9 月10 日(土)開演 14時 終演 18時(予定)

会場:草加市文化会館ホール

出演者:

  AUN&HIDE(邦楽ユニット)

  一噌幸弘(いっそゆきひろ)(笛)

  伊藤多喜雄(民謡)

  木乃下真市(きのしたまいち)(津軽三味線

  中村明一(あきかず)(尺八)

  林英哲(太鼓)

司会:ピーター・バラカン(音楽評論家)、田中隆文(邦楽ジャーナル編集長)

草加市文化会館友の会の先行販売は6月4日(土)10時から、一般販売は11日(土)10時からです。和楽器・邦楽ファンが広い範囲から殺到する恐れがあります。興味がある人は急ぎましょう!

公式サイト:日本の響…草加の陣 − 草加市文化会館

 

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 以下、プレイベントの内容を掲載します。

邦楽の復権、捲土重来(けんどちょうらい)を期したい(山崎館長)

 まずは公益財団法人草加市文化協会常務理事で草加市文化会館館長の山崎大樹(ひろき)さんの挨拶がありました。

【山崎】今日はメディアの皆さん、友の会の会員の皆さん、悪路、悪天の中、お越しいただきまして、深く感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

 今月の21日に、淡路人形浄瑠璃というイベントを草加で初めて開催しました。草加は平成5年から、音楽の街と宣言しておりまして、ともするとハープを中心とした洋楽に傾斜しがちで、和のものが最近演奏されていない。

 それは草加に限ったことではない。日本全体が邦楽からやや遠ざかっているという傾向の中で、ここ草加において、和のものも大いに発信をして、改めて邦楽の復権といいますか、捲土重来(けんどちょうらい)を期したいという思いから、第二弾の和物を9月10日に開催をするということになりました。

 今回集まっていただく6人の演奏家は、どの方をとっても現代の邦楽のリーダーであり、パイオニアです。

 今日、その中から尺八奏者の中村明一さんにご多忙のところ来ていただいて、この企画に深く関わっているということもありますので、企画意図、それから尺八の演奏も聞いていただきたいということから、プレイベントを企画いたしました。

 2020年の東京オリンピックパラリンピックに向けて、これから日本的なものが内外で関心を呼んでいくだろうと感じております。

 日本的な文化の発信という意味合いからも、今年を初年度として、この草加で邦楽的なものを継続的に演じていきたい。

 草加、埼玉はもとより、海外からの旅行者も含めてこのホールに集まっていただきたい。日本にいる外国人にも向けてこのイベントのPRもしていきたい。

 草加邦楽元年という意味合いで皆さまがたに来ていただきました。よろしくお願いをしたいと思います。

 それでは中村さんにバトンタッチをさせてもらおうと思います。

 

 続いて尺八奏者の中村明一さんが前方中央に一人立って、スピーチを行いました。

日本の音楽は最も極端で最も進んだものと言える(中村さん)

【中村】皆さんこんにちは。中村です。今回このコンサートの企画に携わらせていただきました。

 日本の音楽というと、何か古めかしいとかいろいろなことが言われています。でもよく世界中の音楽を考えると、日本の音楽ほど個性のある音楽ってないんですね。

 ひとつはたとえばリズムです。

 ほかの国の音楽は、ある程度決まったビートの中で、その中を分割してリズムが作られます。今ラジオから流れている音楽の99%がそうですよね。

 ところが日本の音楽は、まずリズムの組み立てから、何もない自然と同じところから作っていこう、伸びたり縮んだりするリズムも面白い、ちょっと付け加えたリズムも面白いかもしれない……、というふうにリズムの根本から作り直して、そこから創造しているんですね。

 それから音をどういうふうに積み重ねるかということも、たとえば西洋音楽はなるべくいろんな音を省いてきれいな音だけ残して、それでハーモニーを作りましょうというスタンスなんですね。

 日本のものは、みなさんも感じていると思いますが、雑音っぽい音も入れよう、ちょっと濁った音も入れよう、ときどきはすごくきれいな音も入れよう、それらをどういうふうに組み合わせたら面白いだろう、というようなことから始まっているんです。

 実は世界の音楽は西洋音楽の非常に極端なところまでいきました。でもそれでは面白くないということに気づいて、こんなリズムもできるかな、伸び縮みもできるかな、リズム感があまりないものもできるかな、音色ももっと雑音っぽいものも入れられるかな、というふうに今は現代音楽の中で進んできています。

 それはどういうことかというと、世界中が日本の音楽を目指してもう1回歩み始めたということですね。

 ポピュラーの音楽もそうですよね。今はきれいな声の「はー」というような声ばかりじゃなくて、少しかすれた声、濁った声、それからメロディのないラップであるとか。そういうのはもともと日本の音楽にあったものです。

 日本の浄瑠璃は語りものです。もともと語りと音楽がいっしょになっていた。

 ある意味では日本の音楽は最も極端なものとも言えますが、最も進んだものとも言えるわけですね。

革新的な人たちを一堂に集めて歴史的なコンサートを(中村さん)

【中村】そういう革新的なことをどんどん進めてきた人たちをもういちど再評価して、ここに一堂に集まってもらって、歴史的なコンサートをしようという企画で始まりました。さらに新しい音楽ができるんじゃないか、ということなんですね。

 この世界でトップの演奏者に声をかけて、ほとんどの方にOKをしていただきました。
 これ(ポスター)を見れば皆さんもご存知かと思いますけれど、民謡を歌う伊藤多喜雄さんです。日本の民謡を日本で最初に新しいカタチで出した方ですね。この方のソーラン節は今全国で歌われたり踊られたりしてますね。学校で子供たちがソーラン節を歌っているのを聴けば、だいたい伊藤さんの出した音楽に踊りをつけたり歌をつけたりしているのがわかります。

 このようにソーラン節を新しいカタチで再提示して、世の中をもっともっと明るくしていこうというような気持ちで、伊藤さんはずっとやってこられましたね。

 林英哲さんは太鼓をやられている方です。元は鬼太鼓座(おんでこざ)とか鼓童というグループにいらっしゃいました。今の日本の太鼓ブームの火付け役ですよね。

 そして我々音楽家からすれば、それまで太鼓はあまり正確なリズムが打てなかったり、いろいろなテクニックがうまくいかなかったのを、この人が世界レベルに押し上げた。ほかの楽器とやっても遜色がない。むしろこちらのほうがすごいぞというところを始めて見せた方です。

 まさに太鼓奏者のナンバー1という方です。

 一噌(いっそ)幸弘ですが、彼は笛では日本で飛び抜けて一位です。テクニック的にも文句を言うところがない。彼ほど速く笛が吹ける人は世界になかなかいないじゃないかと言われるぐらいの人ですね。

 能の伝統を持ち込んでいて、彼と僕は音楽的趣味も非常に近い。世界の最先端の音楽を聞いて学んでそれらの手法を採り入れて、今回は彼自身の音楽を作って出します。

 タブラなどほかの国の楽器を使いながら、非常に複雑な、彼しか作れない音楽を出してくると思います。

 木乃下真市(きのしたまいち)君。

 今津軽三味線はすごく大勢の方がやってますけれど、彼もこの世界のパイオニアです。津軽三味線があるのは彼のおかげだといっていいですね。紅白歌合戦に出たのをご覧になったかたもいらっしゃると思います。

 それまであるパターンしかできなかったものを、より新しいカタチで津軽三味線が演奏できるとことを彼が示した。

 またいろんな楽器ともやって、津軽三味線がこんなロックのようなものにも合う、こんなこともできる、だけど津軽の伝統を失わずに、非常に我々にとって重い音楽を提示してきています。

 それが日本中の津軽三味線のファンの心に火を着け、フォロワー、次に続く人たちを生み出してきた。

 AUN&HIDEAUN井上良さんと公平さんの双子和楽器ユニット。HIDEさんは鳴り物師)。

 彼らは津軽三味線もやる、打楽器もやる、笛も吹いたりできる、なんでもマルチにできる邦楽の第二世代です。

 今のポピュラーソングも聞き、そういった良さもどんどん採り入れ、また海外演奏も多い。海外の人にもウケる。こうしたら日本の良さも出せるんじゃないかということを一生懸命やってるグループです。

 非常にダイナミックな音楽を我々の前にどんどん提示して、みんなをびっくりさせてくれるんじゃないかと思います。

 ほかの人たちよりやや若い世代になります。落ち着いた演奏というよりは、非常に若々しい演奏をしてくれると思います。

今4羽ほど同時に鳴きましたよね。(中村さん)

 ここから、中村さんによる尺八演奏です。名人の圧倒的な演奏技術を見せつけられました。

【中村】今日は私が1人参りましたので、ちょっと私はどんなことをしているのかということから始めたいと思います。

 私は虚無僧音楽をずーっと探求して、それを自分のライフワークとしてしきています。

 ただ、プロの生活をしている途中で、音楽的な知識が足りないなと思って、アメリカの大学、大学院に行き、いろんなことを学んできました(バークリー音楽大学ニューイングランド音楽院大学院にて作曲とジャズ理論を学ぶ)。

 ですから、あるときはジャズバンドとやり、あるときはロックバンドとやり、オーケストラとやり、というようなことをやっています。

 今回のコンサートでは虚無僧の曲を1曲やり、あとはロックバンドといっしょに演奏したいと思います。

 じゃあ、技術的にはどんなことをしているのかというと、いくつかやっていることがあるのでお見せします。

 そのひとつは循環呼吸というのがあるんですね。循環呼吸は吸いながら吐くこと。西洋のオーボエやサックスの人がよくやります。ほっぺたにお息を貯めて、ほっぺたで押し出している間に鼻から吸って肺に空気を取り入れる。こんな形です。

※演奏して見せる。

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【中村】これはサックスでやるには全然問題ない。音はきれいに出る。ところが今お聞きになっておわかりの通り尺八だとワウワウワウといってしまう。

 尺八は世界中の管楽器の中で最も効率の悪い楽器なんですね。なので息があればあるほどいい。

 そこで私が発明したのは、カエルのようにほっぺたじゃなくて、ここ(顎の下から喉にかけて)で息を押し出そうという方法(笑)。ちょっと見て下さいね。

※演奏して見せる。拍手が起こる。

【中村】いくらでもきれいに一直線の音が続きます。ここ(頬)も動きませんし、音も揺れない。

 ほかにやってることは……。津軽地方に伝わる「鶴の巣籠り(すごもり)」っていう曲があるんですが、そこの古老に聞いたら、昔は尺八で鶴の声をいくつも出していたけど、今はやれる人が誰もいない、と。

 じゃあ、こんなふうですか?こんなふうですか? とその方と一緒に開発したんです。

 たとえば鶴のお母さんが、こう鳴きます。

  <演奏>

 そしたら子供がこう鳴きます。

  <演奏>

 そしたらお母さんと子供がいっしょに鳴きます。

  <演奏。お母さん鶴と子供鶴の音が同時に鳴っている>

 そしたらお父さんも、こう鳴きます。

  <演奏。お母さん鶴と子供鶴とお父さん鶴の音が入れ替わりつつ重なりながら鳴っている>

※拍手。

【中村】聞こえましたか? 今4羽ほど同時に鳴きましたよね。

 実は世界の管楽器でも、演奏と同時に声を出すなんてのをやってます。どういうのかというと……。

  <演奏>

 うまい人はそれにハモらせるわけです。

  <演奏>

 ところが違うメロディーをできる人はいるかというと、いないんですね。ちょっとやってみようと思います。こんな感じですね。

  <演奏。尺八と声の輪唱のようなフレーズも>

※拍手喝采。

【中村】誰かに、いっこく堂みたいだね、なんて言われたことがあります(笑)。

 では「鶴の巣籠り」を少し短めにやらせていただきたいと思います。聞いて下さい。

  <演奏>

※演奏終わり。大きな拍手。

 

 スピーチと演奏は以上で終わりです。ここからメディアの人たちからの質問に中村さんが応えてくれました。

同じコンサートにこれだけの人が出るというのは歴史上初めてのこと(中村さん)

【質問】6人の人たちは、それぞれどういう人たちと一緒にやるのですか?

【中村】一番最初に出てくるのが、一噌幸弘(いっそゆきひろ)さんの速流笛破(そくりゅうてきは)というグループです。

 一噌幸弘さんの笛、いろんな笛を使います。太田惠資(けいすけ)さんというヴァイオリニスト。この方はヴァイオリンといってもジプシーヴァイオリンと呼ばれている、非常に自由なヴァイオリンを弾かれます。吉野弘さんはウッドベースですね。この方はジャズの方です。吉見征樹さん。この方はタブラですが中東の音楽に非常に詳しいかたです。柿原光博さんの能楽太鼓と望月太喜之丞さんの邦楽打楽器。このグループがまず最初に出てきます。

 次はAUN&HIDE/和楽器トリオ

 今回は3人だけではなくて、尺八の田中黎山さんと津軽三味線伊藤佳祐さんが助演に回って5人で非常にダイナミックな演奏をやってくれると思います。

 井上兄弟が2人とも和太鼓のセットを叩いたりすることもありますし、2人で津軽三味線をデュエットでやる場合もありますし、非常に見応えのあるステージだと思います。

 3番めは私のバンド(AKIKAZU NAKAMURA FOREST)が出ます。

 基本的にはこのバンドでスイスのモントルージャズフェスティバルにも出ました。

 1人1人の名前はそれほど知られていないかもしれませんが、彼らも日本にいる人の中では最高の実力を持っている。

 たとえばドラムの菅沼孝三君は手数王(てかずおう)と呼ばれていて、世界でいちばん速くドラムが叩ける、と言われている人です。ティム・ドナヒューという人は、フレットレスギター、フレットがないギターのギタリストとしては世界最高と言われている。そういう人たちが集まって私の曲をやってくれます。きっとすばらしい演奏になると思います。

 後半は木乃下真市(きのしたしんいち)君がまずソロで出ます。

 それから林英哲さんが加わり、2人のデュエットが聴けます。2人は昔よくやってたんですね。これはしばらくぶりだということで、関係者もみんな切符が欲しいと言っているくらいですね。

 それから林さんの英哲風雲の会といっしょに林英哲さんが太鼓の演奏を聴かせるということになります。

 そして最後は伊藤多喜雄さんが、津軽三味線、尺八、ピアノ、ヴァイオリン、ベース、ドラムという大編成で、いろいろな歌を聞かせてくれます。

 この演奏が一度終わったあとに、最後に伊藤多喜雄さんのバンドといっしょに、今回出たメインの方々、林英哲さん、木乃下真市さん、一噌幸弘さん、AUN&HIDEの主要なメンバー、それから私と、ソーラン節をみんなでセッションしようということになっています。

 木乃下真市さんは伊藤多喜雄さんのバンドに長くいたことがありますし、林英哲さんも伊藤多喜雄さんと共演したことも何度もあるので、久しぶりの人もいます。

 そこに全く新しい人も加わって、どのようなサウンドが出てくるのか、私たちもわかりません。その日の開演直前にちょっとだけ練習しようという話になっているので、思わぬサウンドが聞けるかもしれませんね。

 1組約30分の演奏。そして15分で転換して、次のバンドにいくという形。だいたい午後2時から6時ぐらいまでのコンサートを考えています。

【質問】この6組が集まったのは始めてですか?

【中村】ええ、今回始めてなんですね。ありそうなんですが、同じコンサートにこれだけの人が出るというのは歴史上初めてのことですね。

 ですからある意味では、20年後に邦楽の世界が非常に大きく発展しているとすれば、その原点はこのコンサートだったと言われるような歴史的コンサートになるんじゃないかな、と僕は思っています。

【質問】最後のソーラン節はどなたが編曲されたものを演奏するのでしょうか?

【中村】基本的には伊藤多喜雄さんが編曲されたものをベースに、みんながその場でやろうと言っております。

【質問】アドリブでセッション?

【中村】はいそうですね。

【質問】文化会館館長の山崎さんと中村さんが協力し合って企画したそうですが、ここにいたるまでには長期的な準備や計画があったのですか?

【山崎】わたくしと中村さんとの出会いを話さないといけないんですけど、かれこれ40年近い交流があるわけなんです。

 僕がNHKに勤務していたときに、邦楽技能者育成会という、邦楽を目指す方々の登竜門と言われた半世紀以上続いた育成会をNHKが持っていて、僕は様々な楽器の担当統括をやっていました。そこに中村さんが尺八奏者として入ってきて、素晴らしい尺八奏者だと思いました。

 彼とはずっと個人的にも付き合いをして、私が札幌放送局に勤務していたときは雪まつりに彼とベースの方を呼んで、雪がしんしんと降る中でやっていただいた。

 徳島に勤務しているときは、大塚製薬のシスティーナ・ホール(バチカン宮殿にある礼拝堂)を模した大きな音楽ホールがあるんですが(大塚国際美術館のホール)、そこで、尺八とリコーダー、邦楽器と洋楽器のジョイントをやっていただくとか、そういう企画を我々のほうで考えて必ず中村さんをお呼びしていました。

 そういう交流の中で、私が昨年4月からここへ勤務しているんですが、草加でやったものを見ていると、あまり和楽器のものがないので、私どもの理事の方からも、邦楽とか和的なものをやってほしいという強い推薦もありましたので、中村さんと相談して、企画を彼にお願いして、練りあげていったのがこれです。

 その間に司会進行等も、ピーター・バラカンさんとともに、『邦楽ジャーナル』の田中編集長(田中隆文編集長)にも相談したりして、この企画に至ったということですね。中村さんとの交流の中で作っていったということです。

【中村】企画が何かいいものはないかと言われましたので、私のほうから20ぐらいのいろんなパターンを出させていただいて、その中でやはりこの企画しかないんじゃないかということになりました。

 じゃあ人選はどうしようか、どのようにコンタクトしようかというところは、『邦楽ジャーナル』の田中さんにも協力していただいたり、ピーター・バラカンさんも、こういう人がいいんじゃないのというような話を聞いたり、そういう中からだんだんこの形にできあがってきました。

年1回はやっていければいいんじゃないかなと考えています(山崎館長)

【質問】今後こういう顔ぶれでやることはあまりないことですか?

【中村】基本的にはシリーズ化していただけるという話です。なんとかこれに近いものをしたいと思いますが、ただ皆さんお忙しい方なので、これと同じベストメンバーになるかどうかは、かなり難しいと思います。

【質問】年に1回?

【中村】はい。

【質問】邦楽でも新たな楽器を加えることも考えられる?

【中村】そうですね。今回もお琴の演奏家の方にお願いをしたら、スケジュールがダメであったとかね、ほかの楽器の方も声をおかけした。そういう方も続々と次に出ていただきたいと思っています。

【質問】ピーター・バラカンさんに何か役割をやっていただきたいのですか?

【中村】この企画を進めるにあたってあまり邦楽邦楽と狭くなりたくなかったので、違う世界に窓をあけていらっしゃる方をぜひ加えたいなと思いました。ピーター・バラカンさんはどんな音楽にもオープンな方ですので、この中の方の演奏も聞いていて、ああ、あの人素晴らしいよね、とかそういうお話もずいぶんしていただきました。

 また、ピーター・バラカンさんご自身も多くのファンをお持ちなので、その方々に邦楽のよさをトランスレートしていただく、何か解釈していただいて、噛み砕いて若い人たちに提示していただければうれしいなと思ったのは事実ですね。

【質問】(山崎さんに)これが第一回で、来年以降年に1回は続けられればいいとお考えですか? またそれ以外に草加文化会館では邦楽を腰を据えてやろうという考えがあるのでしょうか。

【山崎】シリーズ化というのは「日本の響」という枠の中で様々な邦楽も含めて、例えば邦楽とジャズのジョイントもあっていいだろうし。そういう音楽的広がりを持ったイベントもいいんではないかなと、今僕自身の考えですけど。
 シリーズというのも財団の特性上、それとホールの限度もありますので、年1回はやっていければいいんじゃないかなと現在は考えています。

 淡路人形浄瑠璃を今年5月に企画させてもらったところ、予想外の好評でした。それから9月の「日本の響」に広がっています。あと何か和的なものを考えているかというと。まだちょっとそこまでは……。必要性は感じているんですけど。古い伝統を持ったものか、あるいは日本ではないけれどいい民族芸術があればそれもよろしいんじゃないか。オリンピックに向けて、ナショナルなものをここに集めてみるのもいいんじゃなかなと。

【質問】(山崎さんに)9月4日に公民館で草加で最初の和太鼓フェスティバルが開かれるそうですが。

【山崎】それはからんでない。あれは市役所がおやりになるんです。

【質問】そうなんですか。でも市民にとっては両方とも見ていただくといいですよね。

【山崎】まあ、そうですよね。草加はけっこう太鼓の歴史もあるみたいなんですよね。

【質問】こちらのホールは演奏されてみてどのような感想ですか

【中村】私達演奏家からすると、大きく分けてあまり響かないところと響くところがあるんですね。響かないところは音響機器に頼らなければなりません。音響では再現できない部分がいっぱあるので、それは残念だなと思います。

 一方響くところも、響き過ぎてしまうところとちょうどいいところがあるんですね。
 ここはその意味で、ほんとにほどよく響いているんです。

【質問】みなさん生演奏ですか?

【中村】今回は音響機器使います。やはりドラムが入る場合、音量のバランスなどもありますので。

【司会】中村さん、最後にひとこと。

【中村】これは過去から今に至っても、これから未来に向かっても、本当に歴史的なコンサートになると思います。
 ぜひお友達にも勧めていただいてご参加いただければ、僕らもたいへんうれしいです。
 よろしくお願いします。

【司会】皆さま中村様にもういちど大きな拍手をお願いします。

 

以上です。